「キミたちに」

 卒業学年の文集に寄稿を頼まれ、先日それを渡しました。

 学年の文集なので他の先生方の目に触れにくいものです。ですからこちらにも写しておこうと思います。せっかく書いたものですから。

「キミたちに」 

 

 キミたちに話すべきことはすべて話してしまったような気がする。しかし最後にもう一度、ひとつだけ話すとしたら、それは「人のために生きよ」ということだ。

 まだ若く夢も希望も野心もあるキミたちに向かって、自分のためではなく他人のために生きろと言ってもピンと来ないかもしれない。しかし結局、自分ひとりのために生きる人生はむなしいものだ。

 例えば、「結局は自分が困るのだよ。だから今から我慢して勉強しないさい」と言われてもさっぱり響かないのは、結局それが自分のためでしかないからだ。こうした言い方に対して、「困るのが自分だけならかまわないじゃん」と憎まれ口をきく人がいるが、それはまったく正しい。困るのが自分ひとりなら自分で責任を取ればいいだけのことだ。ところが今やっている勉強が、他人のためならそうはいかないだろう。

 自分が怠ければ大勢の人が苦しむ、逆に自分が頑張れば大勢の人が救われる、そうした状況なら、私たちはいくらでも我慢できるしいくらでも頑張れる。それが人間の生き方だ。

 この場合の「ひと」というのは「人類」とか「日本国民」とか、あるいは「○〇市民」とか、そういった大きな枠でなくてもいい。自分がつくる建物を使う人とか、自分が売った商品を使う人とか、自分が対応する患者さんとか、教師だったら教え子だとか、そういう人のために日々を過ごす。家族のために過ごす、配偶者を守るために過ごす、そして自分の子どもを守り、より良い人間に育てるために生きる、そうした生き方こそ生きるに値する人生だ。

 繰り返すが、「自分ひとりのために生きてはいけない」というのではない。誰かのために生きない生き方はやがて行き詰るということだ。人はいつか必ず、誰かのために生きたくなる。だから早めに手をつけておいた方がいいよと、そういうことなのだ。

 がんばれ。期待している。