「明日の覚悟」�A

 東日本大震災の記録を読んでいくと、実際の現場に行かなければ分からないことが山ほどあることが分かります。例えば一定期間が過ぎると避難所はトイレの匂いに悩まされるといったことです。

 ハリケーンカトリーナに襲われた時のニューオーリンズアストロドーム球場もそうでしたが、水洗トイレの水が枯渇し、流せなくなるのです。それは同時に、小さな施設では飲み水がなくなるということでもあります。ですから水道が生きていている場合は別ですが、そうでないときは屋上タンクの水は飲用として死守しなければなりません。無駄にトイレに流してはいけないのです。避難が数日以上に及ぶ見通しなら、トイレは路地に設営するか、トイレ用の雨水や河川の水を大量に確保する方法を生み出さなくてはなりません。

 避難所設営の際に最初にやらなければならないのは名簿の作成です。人の出入りがあっても正確であるように、避難してきた人は名前を書き、自宅に戻ったり他の避難所に移ったりする場合は抹消する、そんなふうにして人数を把握し、それとともに各種問い合わせに答えられるようにしておかなければなりません。それを玄関前に掲示しておくだけで、尋ね人に対するきめ細かな対応といった面倒な仕事から逃れられますし、必要な物資の量も把握できます。病気やけがの人は、それも分かるようにしておきます。その人たちにとって、医薬品は食糧よりも優先されるべき事項です。

 どの教室を開放するかは予めきちんと計画しておかなければなりません。というのは避難の日数が重なると、人々は自分の場所をより過ごしやすいものに変化させていくからです。そのあとで出て行ってくれと言っても容易に動いてくれません。それはそうです。すでに疲労困憊しているのです。いまさら条件が悪い(かもしれない)場所への移動など絶対に嫌です。自分は良くても家族のためにその場所は死守しなければならない、そんな気持ちになるのは無理ないことです。

 体育館に避難した人たちのプライバシーを守るために仕切りを入れる――一定期間が過ぎると当然考えなければならないことです。しかしそれも驚くほど難しい。体育館によほど余裕がある場合はいいのですが、雑然と押し込めていた人間を四角いマス目に入れようとすれば入りきらないのです。それはごちゃごちゃした机の中を仕切りで整理することを考えればすぐにわかることです。何かを捨てなければなりません。しかし避難所は机の引き出しではありませんし、人間は捨てられないのです。

 避難所に仕切りを、という話が出たらまず可能かどうかを検討し、無理なら説明して最初から受け入れないようにしなくてはなりません。

 以上、私が本やテレビ番組からつまみ上げた豆知識ですが、これっぽっちでは何の足しにもなりません。市の防災計画を見ても(公務員はやはり真面目なので)全部自分たちでやろうとして、結局うまく行きそうにないのです。

 結局は想像力の問題なのですが、何とかイメージを深め、私たちがこの学校の避難所運営を行うことを前提に、実際に使える計画を立てておきたいものです。