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「文化の伝承」~ロシア・中国、大昔にしか偉人のいない国の困難

 ソチ・オリンピックの開会式の冒頭で、主人公の少女がアルファベットを唱えながらロシアの事物・人物を紹介する場面がありました。たぶんロシア語とフランス語、英語で表記されていたと思うのですが、説明がなかったので半分も分かりませんでした。しかしチャイコフスキーカンディンスキートルストイチェーホフシャガールプーシキンドストエフスキーエイゼンシュタインの名がありました。いずれも懐かしい名前です。しかし裏返せば「こんな古い人しかいないの?」という、そんな感じがしないでもありません。

 これが日本だったらどうでしょう。紫式部から始めてもいいのですが、新しいところからも川端康成、安倍公房、三島由紀夫大江健三郎村上春樹など、世界的な作家はいくらでもいます。画家とか音楽家とかはよく分かりませんが、藤田嗣治とか佐伯祐三草間彌生武満徹小澤征爾五嶋みどりと、分からないなりにかなりの名前が挙げられます。

 ちなみにウィキペディアで調べるとロシアの音楽家は上記以外に、ラフマニノフプロコフィエフショスタコーヴィッチが、文学だとゴーゴリゴーリキーザミャーチンソルジェニーツィンが挙げられていました。
 悪くはありませんが、あの偉大な“母なるロシア”の子どもにしては、あまりにも数が少なすぎます。特にここ数十年は大きな収穫がなく、ソルジェニーツィンはつい最近の人だと言ってももう89歳の高齢でした。

 ちなみにもう一つ、日本の文化に大きな影響を与えた大国である中国にいたっては、「中国文学」で検索をかけても出てくるのは老子孟子孔子司馬遷陶淵明杜甫李白、ぐっと近代になって魯迅郭沫若。私は不案内なのですが高行健(ガオ・シンジェン)というノーベル賞作家がおられるようですが、彼とてフランスで活躍する中国人です。

 世界を見渡せばイギリス文学もフランス文学も古代のギリシャ文学もすべて偉大でしたが、日本への影響という点では中国とロシアが群を抜いています。とにかく日本人はこの二つの国が好きだったのです。しかし両国に、脈々と受け継がれてきた文化というようなものは、もう存在しません。
 中国の文化は文化大革命によって完膚なきまでにつぶされてしまいましたし、ロシアのここ100年あまりの優れたものはそのほとんどが政府に抵抗したり政府の手を逃れた人々によって支えられています。文化を順調に伝承するというのは、意外と難しいのです。

 日本の文化のひとつの特徴は、その多様性と広がりです。バレエが興隆しても日本舞踊が絶えることはありません。スズキ・メドッドと津軽三味線が同時に人々を引き寄せます。能・狂言を観た翌日AKBやももクロのコンサートに行くことに、何の違和感もありません。クール・ジャパンの中身は、アニメにマンガ、Jポップに盆栽・寿司・忍者と、とにかく盛りだくさんです。

 しかしそんな文化の伝承を断ち切ることもほんとうに簡単なのだと、隣りの二つの大国を見ていると分かります。