「私が15歳だったら」

 昨夜の「クローズアップ現代」は、ips細胞のその後、といった感じの内容でした。昨年山中伸弥教授がノーベル賞を取ったばかりだというのに、ips細胞の臨床研究は飛躍的に進んでいるのです。具体的に紹介されたのは、まずミニ肝臓。

 ips細胞から肝細胞をつくるのは難しくなかったのですが、それがうまく生体に入っていかない。小さいまま入れると簡単に殺されてしまい、大きな塊にすると内部に血管網が広がらずやはり死んでしまう、そこで考えたのがips細胞から三つの細胞、「肝細胞」と「血管をつくる細胞」と「両方を繋げる接着剤の役割を果たす細胞」の三種類を混ぜ合わせる方法です。

 実際に三つを混ぜてシャーレに広げると、驚いたことに溶液は中心にスーッと集まって小さなピンクの塊をつくるのです。中にびっしりと血管網が広がるミニ肝臓なのです。そのミニ肝臓を移植された肝硬変のマウスは、9割以上が健康を回復したというのです。

 加齢黄班変性という網膜への応用は、来年から臨床に応用されるということで、かなり以前から報道されていました。今回あらためて取り上げられたのはその費用面です。現段階で1回の手術にかかる費用は2000万円、これでは一般の治療には使えません。

 なぜそんなに高額になるのかというと、とにかくips細胞は「何にでも変わる細胞」なのでちょっとした刺激で加齢黄班変性とは無関係な細胞に育ってしまうからです。そのために熟練した研究者が丸三ヶ月もかかりきりになって、ゆっくりと育てるらしいのです。

 さらに作成の途中で、育った細胞のうち、手術に使用できる部分とそうでない部分を仕分けるのも厄介で、基本的には研究者の目に頼るしかありません。2000万円を一般が耐え得る100万円以下にするためにはこの二つの問題をクリアしなくてはなりません。ところが、技術は日本国内にいくらでもあるというのです。

 熟練の研究者と同じ作業を果てしなく繰り返すといった神経質な仕事は、ロボットが得意です。似たような細胞から適正なものだけを選び出すといった仕事には、コンピュータの顔認証が応用できます。山中教授は、技術も資金も実はさほど重要な問題ではないと言います。成果を出せば技術も金も簡単に集まってくるのです。

 なかなか興奮する話ではありませんか?

 私が今15歳だったら、毎日が夢のようで興奮して過ごすに違いありません。山中教授のあとを継いでips研究に身を投じてもいいですし臨床面での仕事をするのもすてきです。臨床なんていくらでも研究分野があります(私はとりあえず歯の再生医療をやりたい)。そうでなければ超一流の研究者と同じ作業のできるロボットの開発者になってもいいし、細胞を切り取る技術と顔認証をつなげて、次々と網膜を生み出す新しい装置をつくるのもいい――ips細胞だけでもこれだけやりたいことがあるのに、そ例外の世界に目を向けるとハンパではない、あれもやりたい、これもやってみたい・・・。

 私のこの気持ち、今の子どもたちと共有できないものなのでしょうか?