カイト・カフェ

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「マスクの科学」~インフルエンザにマスクは無意味という意見に対して

 数年前、新型インフルエンザが初めて流行した時に全国のスーパーやドラッグストアから使い捨てマスクが消えてしまったことがありました。このマスク不足に際して、テレビに出ていた評論家(?)たちがこんなことを言っていました。
「インフルエンザウィルスはマスクの網目よりはるかに小さいからマスクなんて何の役にもたたない」
「本来マスクはインフルエンザにかかっている人がやればいいのであって、予防のためにやるなんて馬鹿げている」

「欧米でマスクなんてやっている人は誰もいない。マスクをかけていると強盗と間違えられる」etc・・・

 私は「欧米では・・・」で始まることのほとんどは「間違ったこと」だと思っていますからそれだけでもマスクをする十分な理由になると思うのですが、その前の「かかっている人だけがやればいい」に至ってはほとんど絶句状態でした。だってマスクが何の役に立たないとしたら「かかっている人」がつける意味もないはずです。それに「かかっている人だけにつけさせる」なんて、どうやったらできるのか。マスク文化のないアメリカで実施することを考えただけでも分かりそうなものです。「私はインフルエンザにも関わらず外出してきた馬鹿者です」と自ら表示するようなこと、普通の感覚だったできるはずもありません。今の日本や中国のように、みんながつければ患者もつける、それが手っ取り早いやり方です。

 さて先週のNHKテレビ「ためしてガッテン」は、マスクがテーマでした。
 番組の冒頭で数名の被験者たちが日ごろ使っているマスクを持ち寄り、ウィルスと同じ程度の大きさの粒子が通過すかどうかの実験をします。その結果は惨憺たるものでした。一番効果のあった医療用マスクでも74%ほど、第二位が34.3%、第3位が10%。そしてなんと残りの3人はカット率0%、つまり全く防いでくれないという結果です。

 実際、ウィルスをゴマ粒大に拡大するとマスクの網目は20センチ四方くらいになってしまい、引っかかりようがないのです・・・というのが番組の前段、しかしやり方によっては90%以上効果が得られる場合がある、それが後段です。
 さてどうすれば効果が上がるのか。

 実は、マスクの網目がスカスカでもウィルスはカットできて当たり前なのだそうです。なぜなら網目は何重にも重なっていますし、そもそも粒子にはものにくっつきたがるという性質があるからです。市販のマスクが「99.9%除去」と書いてあるのは間違いではないのです。
 それがなぜ0%になってしまうのか―それは一にも二にも装着の仕方です。

 番組では鼻の位置にくるワイヤーを折って鼻梁の形に合わせ、横や下の部分に隙間ができないように押さえることで90%近いカット率を生み出す様子が放送されていました。1箱65枚入り(400円程度)のマスクで、最初カット率0%というショッキングな事実を突きつけられた女性は、耳にかけるゴム紐を短くすることもアドバイスされ、97%を越えるカット率をはじき出しました。

 ただし完璧な装着方法というのは首をちょっと動かすだけでも崩れてしまい、常時90%以上という訳にはいきません。
 そこで「ためしてガッテン」では、満員電車の乗るときや患者の近くにいるときとなどリスクの高いときには完全な装着を目指す、そうでないときには多少ずれることも気にしないというメリハリありあるマスクを提唱します。

 マスクは完全密着ででなくてもウィルス感染を防ぐ効果があるそうです。その一つは“保湿”。これによって喉や鼻の粘膜の線毛の働きを活発化し、侵入したウィルスを外に送り出すことができます。もう一つは私たちが無意識のうちにやっている鼻や口を手で触るという行為、これによって起る接触感染を防いでくれるというのです。

 最後のひとつは特にスジの通った話だと思いました。
 さあ、さっそくマスクを買いに行きましょう。 ガッテン!