おはようございます。大雪の中の出勤、いかがでしたか。本当に大変でした。
というところで、モーニング・コーヒーで一服。身も心も温めてから教室にお出かけください。そこでコーヒーの薀蓄をひとつ。
先月、ピロリ菌の抑制作用のある食品をいくつか紹介しましたが、その中にコーヒーが入っていました。コーヒーの効能はそれにとどまりません。
9月ごろのインターネットニュースに
「延べ40万人、13年間で実証 コーヒー4〜5杯で寿命が伸びる!?」
というのがあったのですが、それによると米国立がん研究所が、
「1日4〜5杯のコーヒーを飲む 男性は総死亡リスクが12%、女性は16%低下した」
と発表したというのです。
さらに細かく言えば、
「男性で1日1杯飲む人は総死亡リスクが6%低下、2〜3杯で10%、4〜5杯で12%低下する。6杯以上のヘビーユーザーは10%の低下する」 とのことです。 「死因別では心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、外傷や事故などの死亡リスクが減った一方で、がんは低下しなかった」
たった10%とはいえ世界中のコーヒー愛好家の人数を考えるとたいへんなことです。私が子どもの頃は、コーヒーは胃に悪い、子どもの飲むものではないというふうになっていたのに、ずいぶんと様変わりしたものです。
コーヒーは最初エチオピア高原あたりで羊が食べて興奮する様子を見た人々が、饅頭の形で食すようになったのが始まりだと言います。やがてそれをお湯に溶くようになり、ろ過の技術が進んでヨーロッパで大流行します。
J・S・バッハの曲に「コーヒー・カンタータ」という曲があって、「コッフェ、コッフェ」という繰り返しが印象的なのですが、ドイツでコーヒーが流行ったのはちょうどそのころです。
バッハという人は音楽を宮廷から外へ持ち出したことでも有名な作曲家で、お気に入りのコーヒーハウスで繰り返し音楽会を開いているうちにこの曲の作曲を手掛けることになりました。
当時、女の子はコーヒーなど飲むものではないという道徳観があったらしいのですが、主人公の女の子はコーヒーなしには生きられないと、そんな設定になっています。
父親:この厄介者、はねっかえり娘め!いつになったらわかってくれるものやら。コーヒーなんかやめなさい!
娘 :まあお父さん、そう厳しいこと言わないで。もし、一日三回のコーヒーが飲めないなら、とっても残念なことだけど、しなびた山羊の肉みたいになっちゃうわ。 ああ、コーヒーの味の何と甘いこと!千のキスよりまだ甘い、マスカットよりもっと柔らか。コーヒー、コーヒー、コーヒーなしじゃやっていけない。私を何とかしようと思ったら、コーヒーをくれるだけでOKよ。
そういう話です。結局父親は娘の結婚を許す代わりにコーヒーを諦めさせるのですが、娘の方は結婚相手にまず、いつでも欲しいときにコーヒーを飲ませてくれるよう約束させることを画策しています。
当時のコーヒーブームはすさまじいものだったらしく、コーヒー豆の輸入による外貨流出に苦しんだドイツ政府はたびたび禁止令を出し、そのためコーヒーはごく一部の特権階級の飲み物となりました。そしてその特権階級ですら十分な量を確保できず、いつしかコーヒーはお湯で薄めて飲むのが一般的となったといいます。薄口ですのでカップの底が見えます。マイセンのコーヒーカップの底に絵柄が書いてあるのはそのためです。
余談ですがメルヴィルの『白鯨』には印象深いコーヒー好きの一等航海士が出てくるそうです。彼の名はスターバックと言います。アメリカの巨大コーヒーチェーン「スターバックス」の名の由来ですが、このコーヒー店の出現がアメリカのコーヒー事情をすっかり変えてしまいました。アメリカンコーヒーと言えばあの煮出した薄口のものをガブガブ飲むのが一般的でしたが、今や深煎りの芳醇なものが主流となっているようです。