カイト・カフェ

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「来るものを見る」~これからの教育行政を怪しむ

 もともとそういう性質ではないはずなのですが、ニュースを見たり新聞を読んだりしながら、年中イライラしたり怒ったりしています。ところが周囲を見回すと、ほかの先生方は案外苛立ちもせず、落ち着いて日々の仕事に邁進しておられます。それはなぜでしょう? 正直言ってみなさん忙しすぎてニュースも新聞も見たり読んだりしていないのではないかと、私は密かに疑っています(違っていたらゴメン)。

 しかし目の前の忙しさに取り紛れ、足音静かに押し寄せて来ようとするものに気づかないでいると、とんでもないことになりかねません。目の前の仕事をしながらも、時々目を上げて遠い先の方も見ておくことも必要でしょう。

 さて、昨年末も押し迫ってから衆議院議員選挙が行われ、自民党の圧勝に終わりました。私は最初から民主党を眉唾な政党だと思っていましたから、この結果にはとりあえず満足しています。ふたたび政権についた反省自民党(であってくれればいいのですが)の手腕を、しばらく見ていこうかと思います。ただしボンヤリと見ていたのでは見たことになりませんから、自民党がどういう方向に進もうとしているのか、常に頭に浮かべていなければなりません。それには公約を見直すのが一番です。

 自民党の公約は四つの柱からできています。「経済再生」「教育再生」「外交再生」「暮らしの再生」で、Action1~4と名付けられています。そのうち、私たちに最も関係の深いのが「Action2 教育再生」で、前文にはこんなふうに書いてあります。

「人づくりは国づくり」。
 日本の将来を担う子供たちは、国の一番の宝です。

 自民党は、世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行します。
 日教組の影響を受けている民主党には、真の教育再生はできません。
 危機的状況に陥ったわが国の「教育」を立て直します。

 私が問題としたいのは「危機的状況に陥ったわが国の『教育』」の部分です。これについてはだれかが分析的に研究し、そう結論を出したわけではありません。メディアが「ダメだ」「ダメだ」というのでなんとなく日本の教育が危機的状況に陥った気がしているだけで、実はまったく健全なのです。

 学力は世界の一位ではないにしても、今も「トップレベル」であることは間違いありません。上海や韓国や台湾シンガポールフィンランドに勝てないとしても、過酷な受験競争や選別主義を排し、OECDで最低の教育予算でやっていこうとする以上、やむを得ないことです。

 道徳性については、これはもう確実に世界一で、日本以上の国家・民族があるとすれば目の前に並べて見せろと、はっきり言うことができます。東日本大震災で見せた日本人の道徳的底力、オリンピックですべてのメダリストが口にする人々への感謝、町の静かで清潔な佇まい、ほぼ無条件で信頼できる商品の安全性とクオリティ、どれをとっても世界一です。

 運動能力の高さもオリンピックで証明されたといっていいでしょう。

 そうなると自民党のやろうとしていることが、いかに危険なのかがよくわかります。健康な体にメスを入れる行為だからです。
 日本の教育は世界一だが理想とする教育から比べるとまったくレベルが低い、だからいじるぞということです。

 もっとも、“公約”の中身を見るとお題目だけのものや平凡なスローガンみたいなものもたくさんあり、実効性はさほどでないのかもしれません。しばらく、“公約”の具体的な意味について考えていきたいと思います。