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「休職者5000人の重さ」~政府は理解できない

 昨日の朝刊に「<心の病>全国教員の休職、微減の5274人…11年度」という記事が出ていました。文科省がこの時期に病気休職者と指導力不足教員、および処分者の数を発表するのは一種の年中行事のようなもので、毎年イライラしたクリスマスになっています。

 ここで注意しなければならないのは、5274人は「休職者」であって療養休暇を取って治療に専念している教師は含まれていないということです。<心の病>のために退職した人数も入っていません。これには少し説明が必要でしょう。

 通常、私たちは精神的な問題を抱えてもそう簡単には休みません。年休をとって病院に行ったり家で休んだりしながら、なんとか問題を解決しようと綱渡り的な努力をします。ほとんどの教員は年休をたっぷり残しているので、それでやり過ごせる場合も少なくありません。
 しかしそれを使い切り、なおも長期の療養が必要となると今度は最大90日間の療養休暇を取ることになります。この間の給与は保障されています。そして90日を経ても復職できない場合は、最長2年の休職期間に入ります。その状況にいる人たちが、文科省の発表で5274人いるわけです。
 休職期間中は一定の割合で給与等が出されますが、生活保障といった意味合いが強いのでそう大した額ではありません。ただし実際に勤務していないにもかかわらず支払われるものですから、支払い側から見れば負担です。両者幸せではありません。
 またこの期間中に県の復帰プログラムを受け、一種のお試し勤務を経たうえで現場復帰を果たす教員もいないわけではありません。しかしそれがうまく行かなければ退職、もしくは分限処分ということになります。
 分限処分というのは「身分保障の限界であるための処分」という意味で、この場合は教員としての仕事が果たせないので(本人にその気はなくても)お辞めいただくということになります。処分と言っても懲戒ではありませんので退職金等も出ます。そして実査に何人かの仲間が、毎年こうして退職していきます。

 話を戻しますが、「<心の病>全国教員の休職、微減の5274人…11年度」の中には今日も崖っぷちできわどい勝負を続けている人も、療養休暇で何とか復職しようとしている人も、結局辞めざるを得なかった人も入っていません。そういった苦悩の中にいる仲間たちすべてを合わせれば、その総数は5000人の2倍3倍どころではないでしょう。
 さらに言えば、苦しむのは当の教職員だけではありません。その人を支えなければならない家族、職場で穴を埋めなければならない同僚、そしてなにより、普通の状況なら普通に学んでいたはずの児童生徒が振り回されます。したがって影響を受ける人の数はさらに数十倍ということになります。その異常が、なぜ放置されているのか。

 見出しを引用した毎日新聞の記事には、次のような一節があります。
 同省(文科省)は「学級を一人で受け持ち、保護者との関係の悩みなどを同僚や上司に相談しにくい状況が依然あるのではないか」と分析。今年度中に対策を検討する。
 分かりにくい文ですが、「学級を一人で受け持っている状況」と「同僚や上司に相談しにくい状況」に原因があると言っているようです。文科省はこうした分析に従って教員を増員しようとしています(財務省は減らそうと考えています)。

 教職員が増えるのはありがたいですが、こうした分析自体は正しいものとはいえません。国やマスコミはもっと現場を見る必要がありますし、私たちも訴える必要があります。