カイト・カフェ

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「学力調査のあこぎな分析」~TIMSS2011のこと

 一昨日「国際数学・理科教育動向調査」の2011年版(TIMSS2011)が発表され、日本の子ども成績が上がったと一応安堵の声が上がっています。しかしそれだけで済ませないのがマスコミ。
 例えば毎日新聞の見出しはこうです。
「国際理数学力調査:学力向上も『好き』は低率 日本の子供」
産経新聞だと、
「アジア勢、理数学力上位独占 暗記偏りの表れ? 国際学力テスト」
「学習意欲上昇も平均下回る 保護者の関心も低く 国際学力テスト」
 要するに成績は上がったかもしれんが、理数が好きだという子も楽しいと答える子も国際平均に届かないじゃないか(こんなのダメだ)、ということです。蓮舫議員ではありませんが、「全部一番じゃなくちゃいけないんですか?2番じゃダメなんですか」とか言いたくもなります。

 そもそも「子どもの学力が高く、意欲的で、暗記に偏らず、毎日楽しく勉強する上に親の関心も高い」という状況があり得るのか、そこから考えてみる必要があります。

 PISA(OECDの国際学力比較)やTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の結果が出るたびに、私は学力と意欲や自信等との比較をしてみることにしています。
 表1は小学校4年生について、TIMSS2011の平均点順位と「私は算数が好きだ」に対して「強く思う」「そう思う」と答えた児童の割合を順番に並べたものです。 (表1)

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 一見して分かるのは成績上位の国や地域がみな算数嫌いなことです。韓国・台湾・日本・フィンランドの四か国は最下位を争うようなありさまです。逆に成績下位のイタリアやハンガリー、ロシアは算数が大好きなのです。

 表2の中学生になるとその傾向はさらに顕著で、その傾向を免れているのはシンガポールと香港だけです(特にシンガポールは昔からこうなので、正確な調査と報告がなされているか、私は相当に怪しんでいます)。
(表2)

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 それはそうでしょう。世界トップクラスの成績を争うとなればどうしても青息吐息でようやく付いて行くような子がたくさん出てきます。そうした子に算数・数学が好きと言わせるのは、容易ではありません。教師はそれなりに頑張っています。

 子どもはもちろん大人だってほめて育てるものです。あれも足りないこれも足りない、やはり教師の質が問題と叩いているうちに、学校の教師はすっかりやる気をなくしてしまうかもしれません。それでいいのでしょうか。

(注1)平均点は標準偏差が100、総平均が500になるように換算したもので、被験者が1000点満点といった問題を解いたわけではありません。
(注2)参加したのは小4相当が50、中2相当が43の国と地域でした。しかし国立教育政策所のサイトから取れる資料は小14、中13分だけだったので、比較はその範囲で行いました。