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「説明不足のこと」~社会が学校を理解しない理由

(ちょっと事情があって先週金曜日の続き「修学旅行について②」が出せないので、一回飛ばして別のお話をします)

 先月31日、厚生労働省は大学卒業後3年以内に離職した人々について、初めて産業別の割合を発表しました。それによると、離職率が最も高かったのは学習塾講師や私立学校の教員などの「教育、学習支援業」で48・8%。次いで「宿泊業、飲食サービス業」が48・5%、生活関連サービス業・娯楽業が45・0%となっています。
 一方低い業種は「鉱業・採石業」の6・1%、次いで「電気やガスなどのライフライン産業」の7・4%、「製造業」が15・6%です。特に過去推移には大きな変化はなく、業種によって大きな開きがあるのも昔からのようです。
 では離職率の高い業種、低い業種にはそれぞれどんな共通点があるのでしょう。これについては先日聞いていたラジオ番組の中に話があったので紹介します。

 一つは“採用と同時に十分な準備もなく、現場の最前線に立たなければならないということ”。就職した4月1日からその部署の担当者として業務を任されてしまう点です。
 逆に離職率の低い業種では現場に就くまでに長い研修期間が置かれ、社内の様々な部署で様々な人や仕事と出会い、十分な力をつけてから自分に一番ふさわしい場所で最初の一歩を始めることができます。よく話に出る「事務系の仕事に就くつもりで電力会社に入ったのに、電柱に登らされている」といったものです。長いところでは2年もの研修を経てゆっくりと育てられます。そういう例が多いのです。しかし離職率の高い職業にはそうしたことはない。

 第二に“業務の対象が法人ではなく個人であるという点”
 クレームを受ける場合も相手が法人の場合ならそこに解決の類型(パターン)があり、ある意味「お互い様」なので困難も少ないのですが、“個人”はそうはいかない。無数のバリエーションがあり落とし所も違ってきたりします(場合によっては“落とし所”自体がない)。

 まとめて言えばロクなスキルもないのに職場の最前線に立たされ、“個人”という難物の多様な要求に答え続けなければならない、それが離職率の高い業種の共通の困難なのです。そしてそれは私たち公立学校の教員についても言えることです。

 いつぞや企業勤めの友人から「多忙多忙といったって俺たちだって同じだ、クレーマーなんて世界のどこに行ったっている、教員は何を甘えたことを言っているのだ」と罵倒されたことがありますが、そのときこの「業務の対象が個人」ということに気づいていればもっとうまく反論ができたはずです。

 教職はまた一人で何役も背負うクロス業務(担任・教科担任・部活顧問・委員会顧問・PTA顧問等々)であること、また校内で起こるすべてのことについて一応知っていなければならない(例えば3年生の修学旅行について全職員が知っておく必要がある)マトリクス型社会であること、そうした事も特殊性として訴えておかねばならないことです。

 社会が学校を理解しない原因の一つは、明らかに私たちの説明不足にあります。