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「やってはいけない」~教員養成6年制で教員志望がいなくなる

 昨夜NHKで「中教審 教員養成で修士課程履修を答申」というニュースをやっていました。簡単に言うと、4年の教職課程以外に1年乃至2年の大学院研修を課し、その間に学校現場での長期研修と院での高度教育を履修させようというものです。
 しかしこれは絶対にダメです。

 何度も申し上げていますが、教職は大学・大学院に6年も通って獲得すべき職業ではありません。同じ6年制でも医者と比べると給与が違う、ステータスが違う、就業年数が違う、の三重苦です。

 6年の修学期間を設けても、医者だったら50年でも60年でも働けます。しかし教員は(定年が60歳のままだとして)4年制だったら最大で38年、6年制だったら36年しか働けません。そして6年制で失う2年間の収入は、就職初年と2年目の分ではなく、37年目と38年目の高収入なのです。

 さらに言えば、医者の場合、医学部で真面目に勉強しても医師になれない人(医師試験に受からない)は少数ですが、教員の場合、採用枠の決まっている採用試験に受からないとなれないのです。6年も学校に通って人生最後の2年間の給与も諦めて、それで採用試験に受からないようだったら目も当てられません。そんな状況でもなお教員になろうという人がいたら、それは聖人か先の読めないバカか、お金持ちの子です。
 中教審としては聖人教師の誕生を願ってのことかもしれませんが、そうはうまく行きません。少なくとも私のような普通のサラリーマンは、自分の子を教職課程に進めようとは思わない、そして教員志望の裾野は狭くなり、ピークも下がります。

 さらに重ねて言えば、一昨日(27日)の読売新聞に「教職大学院、半数で定員割れ」といった記事が出ていたように、教員になるために大学院に行くのは馬鹿げていると、今の大学生でも理解しているのです。中教審メンバーは何を考えているのでしょう。

 実際には、毎年6000人もの院生を受け入れる大学院をどう拡充していくかとか、長期実習生をどう学校に受け入れさせるかとか、様々に問題があってそう簡単に進む話ではないようです。しかし注意して見ていかないと、日本の教育はとんでもないことになってしまいます。
*同じ6年制の歯科医や薬剤師はどうだ、という話もでそうですが、歯科医はもはや供給過剰の斜陽産業。歯学部や歯学科はあちこちで定員割れを起こしています。薬剤師はここ2年間新卒が出なかった(4年制から6年制への移行期)ために現在は引く手あまたですが、すぐに就職難に陥ります。

*学力世界一のフィンランド修士でないと教職に就けないという話を持ち出す人がいます。しかしそれは制度に対する誤解です。
 フィンランドはすべての大学が最低修学年数5年で、それを卒業すると「修士」なのです(3年で「学士」は取れますが、それで卒業できるわけではありません)。教員だけが特別に「修士」であるわけではないのです。昔は高卒だけでも教員になれたのが、今は大卒でなければだめになりました(ただし正規のみ。講師は高卒でかまわない)。
 おまけにフィンランドは大学教育に一銭もかからない国です。日本とは条件が違いすぎます。日本も教員養成課程と同時に、すべての学部を6年制にするとなれば教員志望も減らないかもしれませんが。