教職課程6年制の愚行

 火曜日のニュースに、「教員養成は『6年制』、修士レベル必要…中教審」というのがありました。それによると、

「教員の質を上げる方策の検討を進めてきた中央教育審議会文部科学相の諮問機関)の特別部会は25日、現在4年の教員養成期間を延長し、大学院修士レベルの6年体制を目指すことを内容とした報告をまとめた。

 ただ、修士化の実現時期や義務化には言及しなかった。

 同部会は、教員に修士課程修了を義務づける民主党政権マニフェストを踏まえて議論を行ってきた。

 報告では、いじめや不登校など学校現場の課題の解決能力をアップさせるには、『教員養成の修士レベル化が必要』とした。そのうえで、修士化の実現には、国公私立大の修士課程の見直しや、教職大学院の拡充など養成体制の充実、改善が必要だとした。

 報告は今後、中教審総会で審議され、文科相に答申される。」(2012年6月26日 読売新聞)

 ということです。愚かなことです。

 現在6年の就業年数が定められているのは医学・歯学・獣医学・薬学の4学部だけだと思います(4年制歯学もありますが国家試験を受けられません)。

 6年かけても医学部だったら高収入とステータスが保障されています。

 獣医学部の方もそもそもの定員がきわめて少ないため、就職が100%保障されています。収入もピンキリだそうですが低収入ではありません。

 薬学部は、少なくとも現在のところはドラッグ・ストアの興隆で卒業生は引く手あまただそうです。

 では教育学部はどうでしょう。

 高収入でもステータスでもないのはご承知の通りです。その上、教員免許を手にしても正規の教員になれる可能性は・・・

(教員採用試験の競争率2倍などということはありませんしあったら大変ですが、それでも確実なところで)

二分の一以下です。誰がそんなあやふやなものに6年の歳月と1・5倍の授業料を払おうとするでしょう。しかも負担は単に修学期間が2年延びるだけではありません。

 22歳で就職して60歳まで勤めると就労期間は38年です。6年制大学を出た人は36年しか働けません。その差2年分の収入がなくなるわけですが、その2年分は新人としての2年分ではありません。職業人生活37年目と38年目の収入が入らないのです。それは安い金額ではありません。そして退職金にも響くのです。つまり2年余計に勉強するということは、使う金と入らない金を合算してざっと3000万円の大プロジェクトなのです。教員はそれほどの犠牲を払っても着くべき職業なのでしょうか(そうではない!)。

 同じことは既に歯学部で起こっています。かつて歯学部は若干のステータスと高収入の補償された人気の学部でしたが、歯科医師過剰問題と国家試験の難化方針(H18)によって、今や卒業しても歯科医になれない、なっても食えない学部になってしまいました。そのとたんに志願者が激減し、特に私立歯科大・歯学部では続々と定員割れが起きています。食えない職業、就けない職業のために6年の歳月を差し出そうという人はいないのです。

 教職課程も6年制にすれば確実に志願者が減ります。激減するはずです。そしてそれは教育学部の入試の易化を引き起こし、いずれは頭の悪いお坊ちゃんの行く学部にしてしまいます。

 それを防ぐためには教育学部の定員を十分の一以下に引き下げて確実に教員になれる学部にするか、教員給与を2倍か3倍にして “どんなに無理してもつきたい仕事”に教職を育て上げるしかありません。

 しかしそんなこと、できますか?