東京スカイツリー

 東京スカイツリーが開業しました。私はあまり興味がなかったのですが、「文芸春秋」の今月号を読んでいたら面白い記事が出ていたので、簡単に紹介します。

 そう言われて初めて気づくのですが、東京スカイツリーは地上450mの上部展望台前後までは鉄パイプによる網目状の構造物ですが、その先、展望回廊から数十メートル上のところからはひと固まりの金属の塔となっています。地上デジタルを初めとするアンテナなどが設置されているこの部分はゲイン塔と呼ばれるもので、アンテナ塔としてのスカイツリーにとっては最重要の場所です。長さはざっと160mほど(隠れた部分も入れると240m)、タワー全体の四分の一ほどになります。

 この「塔本体の上に全体の四分の一ほどの金属部分」というとすぐに思い出されるのが寺院の五重の塔です。普通は下から見上げるので分かりませんが、塔の上の相輪と呼ばれる金属部分もほぼ全体の四分の一です。

 東京スカイツリー五重塔の類似点はそれだけではありません。両方とも中央に“心柱”を立ててありながら、ともに塔の重さを心柱にかけていないという点でも同じです。つまり建物は心柱と事実上切り離されており、切り離されているからこそ地震や大風の際に異なる振動で動いて、全体を倒壊から守ってくれるのです。実際、寺院の五重塔は雷火災でいくつも焼失しているのに、地震で倒れたものはほとんどありません。

 ただし建設の手順は両者ではかなり異なっていて、(おそらく)五重塔が心柱を立てた上でその周りに建物を積み上げていったのに対し、スカイツリーは鉄パイプの本体がある程度できたところから、その中心部でコンクリート製の心柱(直径8mの筒状)を積み上げ始めたのです。

 本体が300mほどに達した時から、ツリーの中心部でゲイン塔を組み立てます。本体とゲイン塔の組み立ての二つを同時に行うことで、工期を大幅に縮めることができるのです。そして本体が上に伸びるとその分だけゲイン塔を引き上げ、ゲイン塔が上がった分だけその下の空いたスペースで心柱を積み上げます。そういった作業が繰り返し行われるわけです。

 高さが450mほどになったところで、網目状の本体の建設は終わります、したがってそれからは外観上、塔の頂上からゲイン塔が少しずつ伸びていく感じになります。そのゲイン塔の下では、あいかわらず心柱が丁寧に積み上げられていました。

 日本のような地震国の、しかも東京のような限られた土地しかないところに世界一のテレビ塔を立てるのですから、作業は本当に大変だったようです。

例えば、スカイツリーの大部分を構成する鋼管は通常の鉄の1・6倍の堅さがあるのだそうですが、それを傷一つ入れずにパイプ状に仕上げられるのは日本国内でもごく限られた職人さんだけです。しかも納期に必要な本数をすべて間に合わせなければなりません。

 鋼管は精密部品ではありませんから通常は百分の一までの狂いは許されます。しかしスカイツリーでは千分の一までの精度を求められました。つまり1mにつき1mmまでの狂いなら可ということです。それを4万トン分も用意しなくてはなりません。

 事実ゲイン塔を釣り上げ塔の最上部に設置したところ、その場合の狂いは6cmまで許されていたのにもかかわらず実際には2cmずれただけだったのです。2階建ての建物に換算すると、0・2mmの狂いしかなかった計算になります。

 まさに日本の技術の粋が結集した芸術品だったわけです。