カイト・カフェ

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「ロケットとギリシャ文字の話」~昔、日本にカッパロケットというのがあった

 金曜日に北朝鮮がミサイルの打ち上げに失敗しました。その日の夕方のニュースで街頭インタビューを受けた女性が、「ショボかったですねぇ〜」とか言っていたのが笑えました。家庭や友だちの間ならまだしも、国家的プロジェクトの失敗が「ショボかった」はいかがなものかとも思いましたが、実際、ショボかったというのは適切な表現だったのかもしれません。

 もともとロケットの打ち上げなどというものは初期のうちは失敗続きで、日本のHⅡUだって7回中2回も失敗しています(HⅡUAは20回中1回の失敗、HⅡUBは2回打ち上げていずれも成功しています)。それをわずか2回の打ち上げ経験しかなく、しかも2回とも失敗している北朝鮮が、金日成主席生誕100周年記念に祝砲のように打ち上げようというのですからどだい無理な話です。こんなことを技術者たちが良しとするわけはありませんから、よほど大きな政治力が動いたのでしょう。科学者はさぞかし肝を冷やしたことでしょうし、今ごろは心底、凍りついているはずです。なんとも気の毒な話です。

 私が子どものころにあった日本のロケットは「カッパ・ロケット」というものです。一昨年、探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワ」から粒子を持ち帰りましたが、その「イトカワ」の名のもととなった糸川英夫博士の傑作です。

 しかし当時、アメリカのアトラスロケットは23mもあったのに日本のカッパはたったの2.7m。しかも名前が「カッパ」なので何となく頭にお皿を乗せたロケットみたいで、子ども心にも情けなく、恥ずかしい気持がしました。しかしそれが日本のロケット開発の黎明だったのです。

 その後、「カッパ」に続き「ラムダ・ロケット」「ミュー・ロケット」「Nロケット」「Hロケットと続き、ようやく「カッパ」の意味が分かりました。これはギリシャ文字のアルファベットなのです。

 α(アルファ:大文字はA、以下同様)、β(ベータ:Β)、γ(ガンマ:Γ)、δ(デルタ:Δ)、ε(イプシロン:Υ)、ζ(ゼータ:Ζ)、η(イータ:Η)、θ(シータ:θ)、ι(イオタ:Ι)、となって、次がκ(カッパ:Κ)、λ(ラムダ:Λ)、μ(ミュー:Μ)、ν(ニュー:Ν)となります。

 つまり私たちが「N(エヌ)ロケット」と呼んでいたのは、(たぶん)正式には「N(ニュー)ロケット」なのです。そうなると「N(ニュー)ロケットシリーズ」のあとは当然ξ(グザイまたはクシー:Ξ)になるはずですが、なぜか戻ってη(イータ:Η)になりました。「Ξ」という大文字が使いにくかったのでしょうか。もう少し調べてみたいところです。

 ギリシャ文字はこのあと、ο(オミクロン:Ο)、π(パイ:Π)、ρ(ロー:Ρ)、σ(シグマ:Σ)、τ(タウ:Τ)、υ(ウプシロン:Υ)、φ(ファイ:Φ)、χ(カイ:Χ)、ψ(プサイ:Ψ)、ω(オメガ:Ω)となります。

 放射線関係で使う文字、数学で使った文字、それから「Ω」や「Σ」「Λ」のようにメーカーや製品の名前として、私たちが親しんだ文字がけっこうあります。