カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「昭和の筋肉」~あの頃、ぼくらもアホでした

 ◯◯年前、高校生のときに撮影した8mmフィルムが出てきました。正確に言えばその存在は分かっていたのですが、映写機がないので見ることができなかったのです。最近そうしたフィルムをDVDに置き換えるサービスができたため、この際見ることのできるかたちにしようということで友人が動いてくれ、ようやく◯◯年ぶりの鑑賞会が行われたのです。

 東野圭吾の作品に「あの頃ぼくらはアホでした」というのがありますが、「あの頃ぼくら『も』アホでした」ので、今見ると何がおかしかったのかとクビを捻るような画面ばかりです。音声でもあればいいのですが、オープンリールのテープレコーダーで録音したはずの音は早くになくされてしまい、今となってはナゾの無声映画みたいになっています。しかも面白映像のオムニバスみたいな内容ですので、音声や脚本がないと何をやっているのか分かりません。酒を飲みながらみんなで思案したのですが、最後まで分からない部分はいくつも残りました。

 まだ学生服が中心で、下駄を履いてバンカラを気取った最後の世代の映像です。校舎も古びた木造で、敷地の周辺には桑畑も見られます。

 映像の冒頭部分は私の家で撮影しましたので、当時のお気に入りのマグカップが映っていたり、いつもそばに置いていたトランジスタ・ラジオやサイフォンでコーヒーを点てるためのアルコールランプも映っていて(そういうキザなこともしていました)、当時の自分の部屋がそのまま確認できます。思わず笑ってしまったのは机上の蚊遣豚(かやりぶた:ブタの蚊取り線香入れ)で、そのブタの目をペン立てがわりに使っていたのです。確かにそんなことをしていました。中学校の技術家庭科で作ったミミズク時計は、今は動かなくなって実家に置いてあります。

 映像の途中で、友人が水着に着替えプールに飛び込む場面がありました。友だちから何度も何度も水に投げ落とされたあげく、結局自分で飛び込むというものなのですが(どういう意味なのだろう)、その画面で特に注意を引かれたものがあります。それは友人の筋肉です。映像を見せた息子が思わず「キモッ」と言ったように、恐ろしいマッチョで太ももなどスケートの清水宏保にも匹敵するような太さです。

 サッカー部の選手で強い筋肉が必要だったのは事実ですが、そこまでの太さが必要だったのか。今どきのサッカー選手で、あんなボディ・ビルダー並みの筋肉を持っている人はいないはずです。

 そう言えば私も、中学校まではバスケットボール部員でしたが太い筋肉を誇っていました。特に大腿四等筋と広背筋は“男が鍛えるべき筋肉”で、四等筋は膝頭から垂直に上がる筋肉の割れ目が長ければ長いほどよく、広背筋は女性にはつかない筋肉で「上半身を逆三角形に見せる必須アイテム」ということでこだわって鍛えました。おかげでズボンは太ももで合わせ(ウエストで合わせるとももが入らない)、シャツは首回りプラス3cmほどのものを着ていました。ですからあちこち変なところがブカブカですが、それがよかったのです。

 今から考えると、サッカー選手にもバスケットボール・プレーヤーにも必要のない筋肉だったのかもしれません(あんな筋肉の選手はボディー・ビル以外ではほとんど見たことがない)。無駄なことに精を出していたのかもしれません。

 あの頃ぼくらもアホでした。今の子どもたちがオタ芸に興じるように、ウサギ跳びや懸垂に興じ、エキスパンダーを分解して本気で星飛雄馬の「大リーグボール養成ギブス」を作ろうとしたりしていました、それはそれで十分にオタクだったのです。