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「『瑞浪市いじめ問題』の問題性」~学校の事件対応には手順がある

 先月末、朝日新聞に「中2いじめ自殺 両親の訴え棄却 岐阜地裁」という記事が出ていました。

 岐阜県瑞浪市の市立瑞浪中学校で2006年、2年生だった女子生徒(当時14)が自殺したのはいじめが原因だとして、両親が同級生4人とその保護者に計約5600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、岐阜地裁であった。鈴木正弘裁判長は「同級生らによるいじめの存在を積極的に推認させる事実はない」などとして、両親の請求を棄却した。

 この事件は非常に印象深いものとして記憶に残っています。5年前、初めて報道されたときからかなり異様なものだったからです。

 第一に、葬儀の夜、家を訪れた校長・学年主任(教務主任だったかもしれません)と遺族の会話がビデオカメラで隠し撮りされており、それがテレビ・ニュースに流れたこと。
 第二にそのVTRで校長が言を左右にしているにもかかわらず、主任が「はい、いじめがありました。いじめが原因です。私が確認しました」と鮮やかに証言した点。
 第三に、その後いじめの否定に転じた学校が「いじめ隠し」としてマスコミからさんざん叩かれ、その間にネット上で“加害者”とされた女子4人の名前や住所・電話番号(うち二人は顔写真も)が晒されてしまったこと(今回の裁判結果を受けて先週来削除)。

等によります。

 特に第2の点は校長が対応に苦慮している状況でそれを飛び越え、主任が学校の立場を明らかにして責任を取る態度示したという意味で、あまりもの異常でした。「私が確認した」というのが「実際にいじめの現場にいてそれを確認した」ということなら、その場での指導はどうだったのか問われるでしょう。「加害者や周辺の子からいじめの事実を聞き取った」というなら、それは「確認」でもなんでもない。そこからやらなければならないことが山ほどあります。

 さらに仮に「いじめがあった」にしても、「そのために自殺した」かどうかは必ずしも明らかではありません。その時点では未知の別の原因があるかもしれませんし、複合的な原因である場合だって考えられるでしょう。それをたちどころに「私は確認した」といい、どのような賠償請求にも応じる(実際に払うのは瑞浪市で税金から払われる)といった態度を見せるこの「主任」は何者か、本当に驚いたものでした。

 案の定、事態は暗礁に乗り上げ、裁判にまでもつれこみました。今回は地裁の判決ですので、裁判はまだまだ続くでしょう。
「主任」の安易な発言がすべてとは言いませんが、自殺事件から数日の間に口にしていい内容ではなかったはずです。

 裁判のことはしかたありません。しかしネット上に晒された名前や写真はもう回収しようがないのです。
 いじめや自殺はともかく(それは裁判に任せましょう)、子どもがネット上に晒された責任は「主任」と「学校」(つまりは校長)そして瑞浪市教育委員会が、当然負うべきものです。