交通事故対応のこと

 近隣の小学校の児童が交通事故にあったようです。新聞には重傷とありましたが、内容を読むとそこまでひどいケガではないようで、ひとまず安心です。

 児童生徒の交通事故というと私には忘れられない思い出があります。それは山間地の小学校に勤務していたときのことです。

 山間地といっても一級の観光地の麓ですから店舗や住宅も多く、下手な市街地よりはよほど便利で、その分交通量も多い場所でした。その車の行き来する道路を、何を思ったのか6年生の男の子が右へ左へとガッチャン走り(両手を広げて手首を上に返して走る)で往復し始めたのです。ブーンブーンと声を出しながら。

 ほんとうに何を考えていたのでしょう。そしてやがて、観光客の乗用車とぶつかった・・・。

 学校の裏手の道で、大人なら10秒足らずで走ってこられる場所です。そこから一人の児童が走って学校に戻り、職員室の窓から覗き込んで「Kくんが車にひかれた」と叫んだのです。そのときたまたま出入り口の一番近くにいた私は、上履きのままとんでもない速さで走って現場に駆けつけました。地面に倒れている子に、最初に取り付いたのが私です。

 大声で名前を呼ぶのですが「うん、うん」と唸っているだけで反応がありません。呼吸はしっかりしていましたし、心停止という感じはなかったので心肺蘇生の必要もなさそうです。そこで救急車を呼ぼうとしたら・・・携帯がない!

 余り慌てて飛び出したので、机上に忘れてきてしまったのです。

(教訓:現場には携帯電話を持って走れ)

 その直後、感の良い若い先生が自分より先に走り出した先生方の机上から、ありったけの携帯電話をかき集めて持ってきてくれました。

 そして119を呼び出そうとしてフッと見上げると、正面にのんびりとした雰囲気で電話をかけている人がいます。

「救急車ですか!?」

と叫ぶと、会話を続けながらウンウンとうなづきます。すると近くにいた中年の女性(あとから分かったことですが、それが加害のドライバーです)が、「私、もう呼びました」。

 何のことはない、二重に通報しているのです(私が書ければ三重でした)。

(教訓:事態を早く把握せよ)

 そのあとはみごとでした。こういうことをやらせると教員は優秀です。

 養護教諭は出血箇所を布で押さえ、数人がかりで子どもを道路横に寄せます。その間にいつのまにか二手に分かれた先生たちが、上り下りの車を誘導し始めています(その時点でかなり長い渋滞ができていましたので)。

 救急車の到着とともに担任と教頭先生が乗り込み、そのまま病院に向かいました。

 昨日職員室でこのことを話題にしたら、教頭先生が「やっぱり救急法講習会でやったように

『意識なし、呼吸なし、心拍なし、そこのあなた救急車に連絡をお願いします、そちらのあなたはAEDを持ってきてください、他の人は近くにきて手伝ってください』

っての、大事ですよね」

 危機管理はやはり融通が利かない紋切り型が間違いないようです。

*ところで、心肺蘇生法。

 何回の心臓マッサージにつき2回の人工呼吸だったか、覚えています?

(答え:30回のマッサージにつき2回の人工呼吸。不謹慎みたいですが「もしもしカメよ、カメさんよ」と一曲歌いながらリズムを取ると、30回という回数もテンポもOKだそうです。「もしもしカメよ」で2回、そんなふうに覚えておきましょう)