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「統括指導主事とは何か」~校長を統括する人々

 明日は統括指導主事の学校訪問です。
 少し緊張しましょう(私も緊張します)。

 私たちは教育を学んで教員になります。それと同時に校長を頂点とする学校組織に組み込まれ、学校のことには詳しくなります。しかしその背後にある教育委員会や行政については(たしか大学で「教育行政」とかいった科目もあったはずですが)、あまり分からないのが普通です。もちろんそれでかまわないのですが……。

 私たちは県に雇われた県の職員でありながら市町村立の学校に勤務する、いわば派遣労働者だというお話は以前しました。労働者派遣法の適用外ですから、両方の指導を受けるという極めて不自然で過酷な立場にある、ということも申し上げました。
 では私たちにいちいち指示を出す教育委員会とは何かというと、これがけっこう分かりにくいのです。なぜ分かりにくいのかというと、この「教育委員会」という言葉、実は厳密な意味でいう「教育委員会」と「教育委員会事務局」の双方に使われてしまうからです。

  狭義(厳密な意味で)の「教育委員会」は都道府県と市町村のそれぞれに置かれ、首長によって任命された5人の委員(3人の場合もあれば6人の場合もある)で構成されています。委員は互選によって委員長を決めますから、一応教育委員長が一番偉い人ということになります。

 委員は委員長も含めて非常勤であるのが普通です。しかし非常勤だけだと仕事になりませんから、そのうち一人を常勤として置きます。これが教育長です。この教育長の下に教育委員会事務局があります。一般に都道府県レベルの教育委員会事務局は「教育庁」(教育長と発音が同じなのでまたややこしくなる)と呼ばれ、市町村教育委員会事務局はそのままの名で呼ばれたり単に「教育委員会」と呼ばれたりします(だからまたややこしくなる)。

 教育委員会事務局(教育庁)には大きく2グループの人が働いています。その一方は行政から異動してくる都道府県(市町村)職員で、施設管理や予算関係はこちらの人々の仕事です。もう一方は学校から異動する教員で、授業のしかたや生徒指導のありかた、生涯教育などの指導をする人々です。この人たちは指導主事と呼ばれています。教員の中から特に優秀な人が選ばれることになっていて、多くはそのまま副校長・校長へ管理職の道を進みます。

 ところがよく見ていると、指導主事の中に副校長→校長という出世の階段を異常に早く駆け登って行く人がいることに気づきます。普通なら二校(5年〜6年)経験が原則の副校長を一校で済ませ、捲し立てられるように52〜53歳で校長になってしまう人たちです。

 この人たちに対して「校長を7年も8年もやるなんて本当にお気の毒」と同情する必要はありません。彼らのほとんどは校長を一校経験すると再び県教委に入ることが予定されている人々なのです(もちろん「また県教委に行かなければならなくて可哀そう」という考え方もありますが)。これが統括指導主事です。校長を経験した人がこの職に就き、校長を指導するのです。

 中には統括指導主事からまたステップアップして義務教育課長や学校教育課長になる人もいますが、いずれの場合も(あくまでも教員ですから)最後は教育委員会を出て、どこかの学校の校長として定年を迎えるようになっています。52〜53歳で校長にするのはそのためです。
 統括指導主事経験のある校長は、退職後数年するとどこかの教育委員会で教育長になっているのが普通です。
 しかし統括指導主事も教育長も、60歳前後の人間がやるにはあまりにも過酷な激務です。よほど教育的情熱に溢れ、健康に自信のある方でない限り、むしろ避けて通るべき道かと、私は思います。