カイト・カフェ

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「子どもが歯磨きしたくなる六つの話」~歯の衛生週間がもうすぐです

「人生をもう一度やり直すとしたら」という命題に対してあれこれ考えたことがあります。ただし結論的に言うと自分の人生の不備をあちこちいじりすぎると、結局自分の経てきた人生とはまったく違ったものになってしまい、その結果私が経験しなかった不運や不幸も呼び込むことになりかねなません。したがってやり直しても微修正くらいがせいぜいです。ただしこれだけは絶対に不幸に繋がらないから、ぜひともやり直したいと思っていることがひとつあります。それは歯のメンテナンスです。とにかく私以上の世代は“歯”でとても苦労しているからです。

 私の両親はほぼ完璧な戦中派です。この人たちの幼少期はほとんど甘いものを口にせず硬いものばかりを食べていました。したがってろくに歯磨きもしなかったのに虫歯に悩むことはなかったのです。その歯磨き習慣のなさは豊かになった戦後にまで持ち越され、その結果当然、家族全員歯磨きはいい加減、そして歯科医にお世話になりっぱなしです。“虫歯”は頭痛や腹痛と違って治っても元に戻るわけではありませんから、最期は悲惨な状況で中高年を迎える、それが私たちの人生の終末です。

 この世代は、それゆえに自分の子どもたちの歯磨きはけっこう熱心だったともいえます。私も息子にはけっこうなお金をかけて歯の矯正をしましたが、それとて容貌の問題ではなく、なんと言っても乱杭歯では歯磨きがいい加減になりがちだからです。お陰で高校生の息子には一本の虫歯もありません。

 教員としても私は口腔衛生には特に熱心で、さまざまに考えては手を打ってきました。その一端は昨年お話しましたが、家庭でも歯磨きを続けさせる方法となると子どもに動機付けをするしか方法がありません。なんと言っても「その気」になってもらわないと無理なのですから。

 子どもが小さなうちは「虫歯になるとお医者さんに行ってものすご〜く痛い治療しなければいけないんだよ」などと脅したりしましたが、考えてみると痛みなんて実際に経験しなければ分かりませんし「ものすご〜く痛い治療」をしなければならない状況といったら絶望的に進行した虫歯の場合だけです。これでは動機づけとして弱すぎます。

 では他に虫歯になることで困ることはないのでしょうか? もちろんいくらでもあります。

  1. ものがおいしく食べられない(入れ歯のおばあちゃんに聞いて見て下さい)。
  2. 十分咀嚼できないので胃に負担がかかり結局病気になる。
  3. 治療にものすごくお金がかかる。私の友だちは自家用車1台分くらい使った。
    このあたりまではさほど説得力はありません。しかし次はどうでしょう?
  4. ギャハハと笑ったら口の中が銀歯だらけって、イヤでしょ? 芸能人にそんな人いないよ。時代劇にも出られない。
    この「芸能人に銀歯はいない」というのはけっこう子どもの心を動かします。そして一番迫力があるのは、
  5. 虫歯が進むとどうしても左右どちらかの歯で噛み続けるようになるから、「顔が歪むよ」。
    「顔が歪むよ」と、顔が歪んだ私が言うのですから小学校5年生以上くらいの女の子だと「キャー」と叫んで嫌悪と恐怖をあからさまに表現します。
    そして最後に
  6. 膿がたっぷり溜まった口から吐き出される息って、ものすご〜く臭いんだ。「初めて〜のチュウ」・・・「オエッ!」なんてイヤでしょ?

 それでたいていの子は歯磨き頑張ろうという気になります(その場限りにしても)。要するに問題はイメージ作りです。