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「シーベルト・シーベルト」~私は、福島第一が最初に放出した放射線の、10倍を一日で浴びたことがある

 福島原発のニュースを追っているとそれなりに原子力発電の仕組みや発電所のシステムには詳しくなりシーベルトやベクレルといった単位も覚えたのですが、逆に知れば知るほど訳が分からなくなるのが数値で表される放射線の意味です。

 3月13日に3号機のベント(弁開放による排気)を行って「1204.2マイクロシーベルトという高濃度の放射性物質が排出された」という報道があったとき、なんだか知らないけれどすごい量の放射能が大量にばら撒かれた感じがあったのですが、だいぶたってから胸部CTスキャンが6.9ミリシーベルトと聞いてボカンとなってしまいました。

 私は昨年事情があって2度もCTを受けてしまったのですが、その合計13.8ミリシーベルトマイクロシーベルト(以下、μSvと表す)に換算すると1万3800μSv。なんと3月13日に原子炉一機から排出された放射線量の10倍以上を一人で浴びてしまったのです。

 3月11日の事故発生以来、大量の外国人が本国に脱出を果たしました。しかしその31日の東京新宿区の放射線量は1時間当たり最大で0.109μSvです。一方同じ日のニューヨークは0.095μSv。つまり東京より“ちょっと低い”だけです。おまけに東京からニューヨークに飛行機で移動するだけで100μSvの放射線を受けますから、31日に関していえば「逃げたら損」だったはずです。

 放射性物質は普通の状態で地球上に偏在していて、東京だと何もしないでも年間1500μSvの被爆をします(というのはもともと放射能をもった鉱石のかけらがあったり、1950年代に世界中で行われていた核実験の際にばら撒かれたものが残っていたりするからです)。

 ところがローマは2200μSv、デンバーは4000μSv。ブラジルのガラバリに至っては1万μSvというとんでもない年間自然放射線量を記録しています(しかしだからといってガラバリの人々にガンが多いということもないそうです)。そうなると、1000,2000、1万μSvも恐るにたらん、ということになりかねません。

 しかし一方「一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされる放射線量(自然被爆を除く)は1000μSv」という説明もあり、こうなるともうチンプンカンプンです。

 ところで、ここにきてやっと理解できるようになったこともあります。それはベクレルとシーベルトの関係です。

 ベクレルというのは放射性物質が発生する放射線量のことをいいます。しかしこの放射性物質はそれぞれ性質が異なり、例えばクリプトン85は化学的に不活性な性質の気体で作物や人体には取り込まれず、風に運ばれて人の近くを通過する際に一時的に外部被ばくを与えます。それに対して炭素14は空気中を二酸化炭素の形態で移動し、主に光合成で作物に入ったものが食事により体内に取り込まれた後、人体から排泄されるまでの期間に放射線を出し続けます。つまり同じ放射線量(ベクレル)なら、クリプトン85の方が私たちに影響が少ないのです。

 また発生する放射線の種類も、それがα線β線なら紙やアルミ箔などで止まってしまいますが、ガンマ線だと鉛や厚い鉄板でないと止まりません(中性子はさらに止まらない)。つまり同じ放射線量(ベクレル)なら、それがα線β線だったら皮膚の奥まで入り込むことはなく、私たちに影響が少ないとのです。

 そうしたさまざまな要因を計算に入れて、私たち人間が影響を受ける度合いをシーベルトと言います(したがってベクレル⇔シーベルトの換算は物質ごと行います)。

 原子力の専門家にとってベクレルは大事な指標ですが、私たちにはシーベルトだけが重要、そんなふうに考えてもいいのかもしれません。