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「時は動いている」~津波で子どもが死んでも、その子の姉の入学式は行われる

 土曜日の朝、NHKニュースを見ていたら石巻の小学校の、1年生の教室が映し出されていました。体育館が避難所で使えないので、教室で入学式が開かれたのです。
 新入生の名前が呼ばれます。そして後ろの壁で黒いリボンのかかった写真を持った若いお母さんのが「はい」と答えます。そのとき呼ばれた名 前に覚えがありました。

 佐藤愛梨さん、先月16日の「デイ・バイ・デイ」で取り上げた朝日新聞の記事にあった名前です。地震直後の幼稚園から、園バスで丘を下りて津波に巻き込まれ亡くなった女の子です。

 普通、メディアで注目した人の、その後について改めて知ることはありません。しかしメディアに取り上げられ、やがて忘れられたのちも、人々は生き、暮らしていきます。
 愛梨さんの母親はこの一カ月を、どのように生きてきたのでしょうか。

 予想された入学式を、予想しなかった悲劇的な形で迎えなければならない事実を、どんなふうに受け入れたのか、受け入れようとしてきたのか、私はそれを知りたいと思います。なぜ知りたいのか分かりませんが、知ることである程度共有できると感じているのかもしれません。
 しかしそれとて、2万7千余の死者行方不明者のうちのひとつの物語にすぎません。

 妙な話ですが、昨年私は「兆」という数について調べたことがあります。そのとき驚いたのは、1mmの1兆倍、つまり1兆mmは100万km、地球を25週もする長さだったということです。
 一口に「兆」と言っても、その内実は非常に重いのです。

 死者行方不明者2万7千余というのも一口で言えますが、その内実は恐ろしく重いと言えます。

(*以下はNHKのホームページから運んだ記事です。)

石巻 遺影胸に小学校の入学式」

 宮城県石巻市の小学校で入学式が行われ、津波で亡くなった2人の子どもの代わりに遺族が、遺影を胸に出席しました。
 石巻市佐々木明日香ちゃん(6)と佐藤愛梨ちゃん(6)は、3月の大地震の際、通っていた幼稚園のバスに乗ったまま津波に巻き込まれて亡くなりました。
 22日は、2人が入学する予定だった蛇田小学校で入学式が行われ、2人に代わって遺族が出席しました。
 入学式は、避難所になっている体育館ではなく、1年生が学ぶ4つの教室で行われ、冒頭、明日香ちゃんと愛梨ちゃんに黙とうがささげられました。
 式のあとの最初の授業では、クラスメートの名前が順番に読み上げられ、明日香ちゃんと愛梨ちゃんの名前が呼ばれると、遺影を抱えた2人の母親が目頭を押さえながら「はい」と答え、担任から2人が使うはずだった名札を受け取っていました。
 入学式に出席した明日香ちゃんの父親の佐々木純さんは「娘が出席できなかったのは残念ですが、入学した子どもたちは楽しい学校生活を送ってほしい」と話していました。
 愛梨ちゃんの母親の佐藤美香さんは、「天国の小学校で友だちと学校生活を楽しんでほしいです」と話していました。(04月22日 17時25分)