「日本のピークはこれからかもしれない」~ユーミンはそう言った

 土曜日の朝、息子が財布をなくしたことに気づきました。家の中をいくら探してもないので、結局、前の日の夕方、店で買い物をして待ち合わせた私の車に乗るまでの数百メートルの間に落としたものではないかということになり、警察に届けるとともに現場にも行ってみました。ところが一面の雪で、あったとしても探しようがありません。あるいは川が近くに流れているので、拾われた後、川に捨てられたのかもしれません。

 財布の中身はわずか200円とカード類でしたが、学生証の再発行やら面倒なことも多そうです。しかしそれよりも「財布を拾って届けない人がいる」という事実を突きつけられるのが私はいやでした。日本人の美徳はまだまだ捨てたものではないと信じているからです。

 丸一日待っても見つからず、やはりダメかなと思い始めた午後9時ごろ、交番から電話がありました。やはり雪に埋もれて、長い時間誰にも気づかれなかったようなのです。

 拾った方は「お礼は必要ない」とおっしゃったそうで、警察も住所までは教えてくださいませんでした。電話番号を聞いたのでさっそく連絡したのですが、声の感じは30歳前後のとても雰囲気の良い女性でした。

「日本では物を失くすのが難しいほどである。私が学校に通っていたとき、財布と携帯電話を教室に置き忘れてしまったことがあったが、翌日、教室には私の財布 と携帯電話が置かれていたのだった。また、私はこれまで6回も財布を落としたことがあるが、その都度、一円も盗まれること無く私の手元に戻ってきている。 ある時などは、財布を落としたことに気付いた日本人が私のところまで走り寄ってきて財布を手渡すと、そのまま去ってしまった。これには本当に驚かされた」
 これは中国のブログに書かれていた文章です。インターネット上にはこうした日本人の美質に関する記事がいくらでも見られます。

 街がきれいでごみがほとんどないこと、人々が親切で誠実なこと、仕事に対して極めて緻密であること、数えたら切りがありません。
 そしてすし店や牛丼店の海外進出とともに、店の清潔さや積極マナーがどんどん海外に輸出されようとしています(例えば日本の最高級ホテル、和倉温泉の「加賀屋」は加賀屋のノウハウをすべてそのまま台湾に移し、「日勝生 加賀屋」を立ち上げています)。

 昨日のニュースによると、2010年のGDPは中国に抜かれて世界第三位になったことが確定したとのことです。しかし今挙げた日本の美質は外国を圧倒していますし、工業技術とは違ってそう簡単に真似できるものではありません。今後輸出するとしたら、おそらくこれが最高のもののはずです。

 今月の「文芸春秋」の中で、松任谷由美が「日本のピークはこれから来るような気がする」といっていましたが本当にそうかもしれません。産業の中心が第一次産業から第二次産業第三次産業と移ってきたこれまでの流れからしても、工業製品で世界の最先端を走り続けたあとは文化輸出というのは、むしろ自然な流れでしょう。

 ところで、財布が戻ってきたのはいいのですが息子は何となく浮かない顔をしています。警察で財布を受け取ったとき、30センチ角ほどのトレイに中身を全部広げられて確認を求められたのですが、その中に見られたくないものが二つあったのです。

 ひとつは昔こっぴどく振られた女の子の写真(未練はないけど捨てるのもためらわれて・・・とか)。もうひとつは一昨年友達に連れられて行った秋葉原メイド喫茶の会員証だそうです。

 一緒に行った私も情けない・・・。