カイト・カフェ

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「三大ステータスが目標とならない時代」~医師も弁護士も会計士もダメ

 学校というところは保守的なところで、そして私は保守的であるべきだとも思っています。常に先進的であれこれやってみては失敗を繰り返すようでは、子どもたちがたまりません。実験的なことは他に任せ、右顧左眄して逡巡しながら、これは行けそうだと思ったらようやく腰を上げればいい、そんなふうに思っています(だから優柔不断な私には向いています)。

 ところが、政府というのは案外革新的で、ときどき信じられないほど思い切った、そして理解できない政策を打つときがあります。代表的なのは弁護士試験と公認会計士試験の緩和です。

 弁護士試験の方は1999年から始まった司法制度改革によって大幅な易化が始まりました。年間の合格者はかつての3倍ほどになりましたが、まだまだ需要の少ない現在の状況での増員ですからたちまち仕事が不足し、今や年収300万円という最低レベルに近い収入しか持たない弁護士が大勢出てきています。
 もうお気づきと思いますが、弁護士事務所のテレビコマーシャルというのはかつてなかったものです。しかしもう都会が弁護士過密地帯となった以上、多くの弁護士たちは都落ちをし、テレビでコマーシャルを打って生活を成り立たせるしかないのです。

 公認会計士の方は2002年に金融庁の審議会において、平成30年までに5万人に増やすことが決められ、そのためにこれまで年間2000人程度の合格者だったのを3000人程度に増やすことにしました。しかし合格者の受け皿の方はまったく増えておらず、そのため現段階で2000人もが一般事業会社や会計事務所に就職したり、生活のためにコンビニや日雇い労働に従事しているといいます。

 私が子どものころは医師と弁護士と公認会計士が三大ステータスでした。この三つのいずれかになれば、必ず高い収入とステータスが保証されると信じていたのです。

 実際のところ、私自身は三つのうちのひとつも現実には目指しませんでしたが、心のどこかで憧れ、学習意欲の一端を担っていたはずです。
 もう少しがんばれたら目指してみようかな、といったものです。

 今や医師は殺人的に忙しい上に訴訟リスクの大きすぎる仕事、弁護士も公認会計士も試験に合格したところで仕事がない。

 統計には出てきませんが今の子どもたちの最大の目標は、個人トレーダーだそうです。何の資格も経験もなく、コンピュータ上で証券の売買を行って大金持ちになること。

 さてはて、政府は日本の子どもたちをどんなふうに育てようと思っているのでしょう。