イグ・ノーベル賞

 今週月曜日のNHKクローズアップ現代は「イグ・ノーベル賞」がテーマでした。

 イグ・ノーベル賞 (Ig Nobel Prize) は1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞で、“Ig”は「反」とか「非」を表す接頭語です。そしてその上で“ ignoble ”(下品な、卑劣な、あさましい)と掛けたダジャレとなっています。

 この賞については2002年に玩具メーカータカラの「バウリンガル」(犬の鳴き声の翻訳機)が受賞したことでニュースになり、そのときずいぶんふざけた賞があるものだと思ったのですが、今回の番組で見るとかなりレベルの高い研究だということが分かります。

 番組の中ではまず「強力な電磁石の中ではカエルが浮く」という研究が紹介されました。物理学では「静止物は空中に安定的に浮かすことをできない」という原則があります(教科書的にはそうなのだそうです)。しかしカエルは静止物ではなく、そこに注目したのがこの研究の優れたところだといいます。研究者のアンドレ・ガイム博士は2000年にイグ・ノーベル賞を取ったあと、今年(2010年)改めて本物のノーベル物理学賞を取り、初めての両賞受賞者となりました。

 その他にはクイーンズランド大学の「石炭ピッチは固体であるにもかかわらず、長期的に見ると液体と同じ性質を持つ」というもので、ロートに乗せたピッチが10年に1滴という時間をかけて溶ける様子が映し出されました。1927年に実験を始めた教授はすでに他界し、しかし落ちる瞬間を見たものが誰もいないので今後100年は続けるという気の長さです。

 2003年化学賞には金沢大学の広瀬幸雄教授が選ばれています。広瀬先生は18歳のときに「日本中の銅像はハトのフンで汚れているのに金沢市兼六園にある日本武尊像だけはフンがかかっていないのはなぜか」という疑問を持ち、それを30数年も温めていたといいます。それがたまたま日本武尊像の修復に携わることになり、ついでに調べたところ通常の5倍の砒素が含まれていることが分かったのです。そこから「鳥を寄せつけない合金」という話になります。

 日本人受賞者として他には、42歳の厄年を機に毎日食事の写真を撮り、それを34年間続けた結果、体調は3日前の食事に左右されるという結論を導いたドクター中松こと中松義郎さん。

 足の匂いの原因となる化学物質を特定した資生堂研究員の神田不二宏さん。

 ハトを訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させることに成功した渡辺茂慶應義塾大学教授。

「たまごっち」の開発者横井昭宏さん、真板亜紀さん。

 カラオケを発明した井上大佑さん。

 ウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した国立国際医療センター研究所研究員の山本麻由さんといった方々がいます。

 独創性に欠ける日本人という言い方がありますが、1991年の創設以来20年間に日本人受賞者が出なかったのは7年間だけで、日本はイギリスと並ぶイグ・ノーベル大国なのです。

 私はここで快哉を叫びます。

 今年の受賞者の研究には

「クジラの“鼻水”の画期的な採取方法を開発したメキシコのチーム」

「怒鳴り散らすことによって体の痛みが緩和することを証明したイギリスのチーム」

「粘菌が迷路問題を解くことを証明した日本の中垣俊之教授」

「従業員の昇進を成果主義ではなくランダムに行う方がより効率的な組織にできることを証明したイタリアチーム」

などが受賞しています。

 文章にするのをはばかるような研究もありますが、ぜひ調べてみるといいでしょう。

 面白いですよ。