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「なぜ義務教育は9年で6と3に分けるのだろう」~現在の学校教育の成り立ちと未来①

 なぜ義務教育は9年で、小学校6年と中学校3年に分けるのだろう(9年を二分するなら4−5とか5−4とかあったろう)。このことについてかなり熱心に調べたことがあります。その結果は、正確に言えば「よく分からない」、ですが、いくつかヒントはありました。

 まず第一に、日本の場合、初期の義務教育は尋常小学校4年だったということです。それがやがて社会人として必要な最低の技能の習得に4年では足りなくなり、また財政的に何とかなりそうだということで6年に延ばされます(1907年)。
 そこに戦後、占領軍統治下でアメリカの影響のもと、3年の中学校が上乗せされたのです。終戦まで義務教育が4年だったらそうはならなかったかもしれませんが、とりあえず初等教育6年は制度として定着していたので、6・3・3制が乗っかりやすかったのです。

 一方日本が手本としたアメリカでは別の理由によって6・3・3制が始まります。
 アメリカの教育は1930年あたりまで、8年の小学校教育の上に4年の高等学校育が乗るという形で行われていました。基礎学校(エレメンタリースクール)と高等学校(ハイスクール)です。ところが産業の発達とともに高等教育を始める段階をもう少し下げる必要が出てきました。

 そこで小学校から2年切り取り、高校から1年切り取って、合わせて中学校というものを生み出したのです。高等教育の先取りですからこの学校はジュニア・ハイスクールと呼ばれ、小学校よりはむしろ高校に近いものでした。

 さて、ここまでくるとだいぶ分かったような気になります。しかしさらに考えたとき、アメリカはなぜジュニア・ハイスクールをつくるときに8年制小学校から2年しか切り取らなかったのか、8・4制を三分割するなら4.・4・4制が最も単純で自然ではなかったのかという疑問が生まれてきます。

 私は一時期、「(英米では)13歳以上はティーン・エイジャーと呼ばれるから、だからここから中学校にしよう」というかなりいい加減な理由ではないかと思ったりもしましたが、やがて本質的な事実に出会います。

 どうも当時のアメリカでは、義務教育の5年目(11歳)での中等教育は早すぎると考えられたらしいのです。そこには「子どもは12歳を越えないと抽象的な思考ができない」という心理学的な理由がありました(たぶんそうです)。
 これで一件落着です。

 13歳以上になると具体物がなくても学習ができる、そこで算数は数学になり、図画工作も技術や美術になる。だから6.・3・3なのです。

 さて、それにしても何か違和感はありませんか。7歳から15歳までの子どもを横に並べて2分しようとして、ほんとうに12歳と13歳の間に線が引かれている感じがするでしょうか。ほんとうに子どもは、13歳にならないと抽象的な思考はできないのでしょうか。5年生・6年生の算数は、相変わらずものを動かさないと理解してくれないのでしょうか。

 何かぴんと来ませんよね。

 分数の計算や比などはかなり抽象的な領域ですし、カッコを使った計算なんてモノを動かしていたら説明しきれなくなります。

 実はここに特別の事情があります。日本の子どもだけは、10歳を越えるとかなり抽象的な思考ができるらしいのです。

(以下、次回)