見出しはセンセーショナルな方がいいと思って書きましたが、私の話ではありません。同僚の若い女性教諭の話です。
生徒と飲んだというのも正確ではなく、「生徒が飲んでいる場所に同席していた」くらいが正確なところです。22年も前のことですからもう時効でしょう。その事実を私が知ったときですら、問題にするには手遅れ(というのは、生徒たちはもう卒業してしまっていたからです)でしたから、今お話しても大丈夫だと思います。
事実を知ったのは、中3だったの女子生徒の父親からの情報です。「今だからお話しますが」といった調子で語られたのは、半年ほど前、女性教諭の住宅に女子生徒が3人ほど遊びに行き、その際、生徒たちが持参した酒をその場で飲んだ、といったことです。
「今だからお話しますが」と言った父親の言葉尻には、「私だって面白くない」とか「学校だって何をしているか分からない」といったニュアンスが漂っていました。
それきりにしても良かったのですが、後々また同じことが話題にされて答えられなかったらいけないので、私はその教諭に事実かどうか聞いてみたのです。そしてほぼ、実態は父親の言うとおりでした。
「飲んではいけない、と言うには言ったのです」と、その教諭は言います。しかし押し切られたのだと。この辺のニュアンスは中学校の教師でないと分からないかも知れません。特に学校関係者以外の人が聞けば、なぜ押し切られるのかさっぱり想像がつかないでしょう。
しかし彼女の言うところはこうなのです。
とにかく3人の女生徒は年がら年中問題ばかり起こし、学校では常に誰かから怒られているような子たちです。その子たちと普通の会話ができるのは世代的にも近い、新卒のその教諭だけでした。そこに落とし穴があります。
彼女には「私だけがこの子たちと学校を繋げる唯一のパイプなのだ」という自負と責任感があり、それが強い指導を鈍らせていたのです。
「私が切れてしまったら、この子たちはどこへ飛んでいってしまうか分からない」
そう思うと強い調子で叱ることも、飲酒の事実を後日学年主任なり教頭なりに伝えることもできなかったと言います。
当時は私も若く経験も浅かったので、それに対する十分な答えはなかったのですが、今なら自信をもって言うことができます。
その酒がビンなら叩き割り、缶なら踏み潰して子どもたちを怒鳴り上げればよかったのです。子どもには一滴のアルコールも飲ませてはいけません。一口でも飲んだ段階で非行事実になってしまいます。酒を買ったこと自体は非行でも何でもありませんから、学校に報告する必要もないでしょう。とにかく酒を飲めないようにして怒鳴り上げ、住宅からたたき出せばよかったのです。その上で翌日は何ごともなかったように、いつもと同じ態度で接すればよいのです。
子どもは自分が悪いことをしようとしていることは百も承知です。そして自分が悪いことをしようとするのを止めない大人は信用しません。全力で止めてこそ子どもの信頼を繋ぎとめることができます。
私はこのやり方ついて、完全に自信をもっています。もちろん酒瓶ビンを壊された時点では汚くののしるかもしれませんが、そんなことは気にしなくてかまいません。すべての子どもは「良くなりたい、すごいと言われたい、認められたい、誉められたい、役に立ちたい」と思っているに決まっています。勢いで買ったに酒も、だれかに止めてもらわなくて困るのです。だから先生のところに来たのです。