この学校で学んだことの二つ目は、問題が起きたとき、その問題自体をあつかうのはもちろんのこと、それ以外に全体に目を向け、全体から包み込むように問題解決に向かうとうまく行く、そうしなければならないということです。
例えてみれば何かの病気になった時、病巣自体に治療の手を加えると同時に、全身状態を良くする努力をする、栄養価の高いものを食べ、睡眠を十分にとって生活のリズムを立て直す、といったことです。
具体的に言えば、クラスの一部にイジメのような事件があった場合、その問題を解決すると同時にクラス全体を大切にし、気持ちの良い、規律正しい学級づくりに心がけ、達成するといったことです。問題の核心から周辺に向かう力と同時に、周辺から核心に向かう力を生み出すと言ってもいいかもしれません。
外から圧力を加えることには二つの意味があります。
ひとつは問題の当事者に周囲から圧力を加えることです。周囲がしっかりしていれば、当事者たちもバカをやっていられないようになります。あるいは周辺に気持ちの良いものがたくさんあれば、問題に関わっているよりそちらの方がずっと居心地のよいことが当時者にも分かるからです。
周囲をしっかりさせることのもうひとつの意味は、問題の解決に手間取ったり失敗した場合も、事件が周囲に飛び火しないように先手を打っておく、ということです。問題がひとつだけなら私達もかなり良い勝負ができます。しかし同時多発テロのようになってしまうと、まったく対応できなくなります。
ただし、問題をいじると同時に周辺にも手を加えるというのは一人でできることではありません。特に学級担任の場合、当事者たちとじっくり立ち向かうとクラス全体が置き去りにされてしまうことがしょっちゅうです。 ですから重大な問題には、学年や学校全体の協力が不可欠なのです。