Moon & Earth

 先週のことですが、山中先生が突然、「なぜ太陽の反対側にあるとき、月は必ず満月になって皆既月食にならないのか」という極めて怪奇な話を持ち出しました。

 そんなの当たり前じゃないか、と誰もが思うのですが、それでいて誰ひとりうまく説明できません。たまたまそばに座っておられた赤澤先生の頭を地球に見立てて(失礼な話だ)、握り拳の月をぐるぐる回して見るのですが、どう考えても毎回、皆既月食になってしまう。それどころか、満月が一晩中輝いていることさえできず、必ず一回は地球の影に入ってしまうのです。しかし現実にはそうはならない・・・で、家に帰ってから調べて見ました。

 結論的にいうとどうやらあの、理科室にある日食や月食を説明するミニチュアモデルがいけないのです。太陽・地球・月の位置関係を、あんなふうに思い浮かべるから分からなくなる、つまり地球と月との位置はあんなに近くないのです。

 おおざっぱに地球を直径10cmの球と例えると、2・9m先のところに直径2・7cmの月があり、その反対側に直径10・9mの太陽があって、そこまでの距離は1150mという関係になります。

 まだイメージがつかめないので更に例えると、ソフトボール(直径9・7cm)から3mほどはなれたところにピンポン玉(直径4cm)よりかなり小さいボール(5百円玉―2・6cm−を回転させた程度)があって、それが3mほどの距離を保ちながらソフトボールの周りを回っている。その反対側の1・2kmほど先に、アドバルーン(直径10m)ほどの太陽がある、それが太陽と地球と月の位置関係です。それだけでも地球の影に月がはいるのはかなり難しそうです。

 ただしそんな正確なミニチュアを作っても、太陽と地球と月が常に一直線上に並ぶようなミニチュアだと必ず皆既日食になってしまいます。現実にそうならないのは、ここにもう一味付け加えてあるからなのです。それは月が地球を回る公転面は、地球が太陽を回る公転面と5度ほどずれている、ということです。

 この5度のずれのために、太陽・地球・月が一直線に並ぶ確率は非常に小さくなります。

 地球の直径の29倍という遠いところにある月、5度の傾き、この二つが月食の秘密を解き明かす鍵でした。

(イメージとしてはこんなふうになります)