全国学力学習状況調査の結果について、私の学校は、
１９年度・・・地域でダントツの最低。
２０年度・・・科目よりでこぼこはあるものの、全体としてはほぼ平均。
２１年度・・・地域でダントツの１位
という成績でした。
わずか３年間（実質的には２年間）でこれだけ成績を伸ばした陰には、ある特別な方法がありました。それは全国１位の秋田県と同じことをする、ということです。
秋田県の高学力については、少人数学習のおかげだとか三世代家族の多さだとか、あるいは教員採用試験の倍率の高さから教員が優秀だからだとかいろいろいわれますが、秋田県教委自身の分析に拠れば、それは違います。
秋田県教委自身の分析については「秋田県の学力の状況と主な取り組み」（平成２０年度版）によって一部知ることができますが、全国平均と比較して圧倒的にポイントが高いのは、
- 家で学校の授業の復習をしていますか。（小学校＋３６．３、中学校＋２７．５）
- 普段（月〜金曜日）、何時ごろ起きますか（「７時より前に起きると回答」）。（小学校＋１４．７、中学校１８．０）
- 今 住んでいる地域の行事に参加していますか。（小学校＋１５．７、中学校＋１８．０）
などです。
しかしそれらを圧して、小学校で＋４３．０％、中学校で＋４４．９％というオバケみたいに高いポイントを上げている項目のあることに、世間は気づいていません。
その項目とは「H19全国学力・学習状況調査の調査問題を授業の中で活用しましたか」というものです。
なんのことはない、秋田県はたいへん高い割合（おそらく１００％）で、全国学力学習状況調査のテスト対策をきちんとやっているのです。
（これに良く似た例として、ＰＩＳＡの学力国際比較テストでトップのフィンランドの教師に「なぜ、フィンランドはそんなに好成績を上げられるのですか」と訊ねたところ「たくさん練習したからです」という答えが返ってきたという話を新聞で読んだことがあります）
秋田県はずるいという話ではありません。あの調査で好成績を上げようとすれば、試験対策は当然なのです。
全国学力学習状況調査の問題のユニークさ（例えば国語で非常な長文が読ませながら問題数は異常に少ないとか、算数では生活体験が十分ないと解けないとかいったもの）については繰り返し言われて来ましたが、そうした問題が出されること自体が問題だ、とういう話はどこからも出てきません。
しかしこれは極めて遺憾な話で、おそらくＰＩＳＡの国際比較を意識しているためでしょう、全国学力調査は国の学習指導要領をきちんと守っていても成績は上げられないのです。
例えて言えば、理科の第一分野をやるように言われたのに第二分野が出されたようなもので、テストのための学習をしなければテストはできないようになっています。
国の規準を守っていたら国のテストができないという不誠実なテストに、基礎学習の強化といった真面目な方法で取り組むのはばかげています。
児童生徒は、まずこの種のテストに慣れなければなりません。
それに気づいて、少なくとも平成１９年度調査の過去問を授業であつかうようにと指示した秋田県教委はたいしたものです（まず間違いなく、県教委の指示です）。
さて２１年度の私の学校の場合、２年分の調査紙がありましたから２０年度の秋田よりさらに有利でした。そして類似する問題を相当数作成し、子どもにやらせもしました。その結果が、地域トップです（もちろん秋田県の平均よりも高い点数です）。さらに細かく分析すると、国語の漢字やローマ字、算数の基礎計算など、試験対策が効かない部分では平凡な（一部はそれ以下の）成績でしたから、いかに試験対策が有効かは明らかです。
大阪の橋下知事などが水戸黄門の印籠のように振り回す全国学力学習状況ですが、その程度のものです。
民主党政権に代わって悉皆調査としての全国学力学習状況調査はなくなるでしょう。平成のバカ騒ぎもこれで終了です。
ただしこれだけは言っておきます。
試験対策を本気でやろうと考えたのは私たちですが、教師の提案に素直に従い、一生懸命前向きに学習しようとした子どもがいて初めて成功できることです。
そのことは本校の名誉のために付け加えておきます。
【付記】
全国学力学習状況調査については国語A・B、算数数学A・Bの点数および児童生徒質問紙調査についてのみ分析され論及されますが、実は学校長が書く「学校質問紙」という第三の調査があり、学校全体の比較が可能になっています。その情報については学校に知らせられないので、ほとんどの職員は知りません。調査用紙を記入した学校長本人と、おそらく都道府県教委は知っていますが、秋田県の「秋田県の学力の状況と主な取り組み」のような場合に出てくるだけです。
