シングル・モルト・ベイビーズ

 一般に、喫茶店に入ってコーヒーを注文すると、ほぼ確実にブレンド・コーヒーが出てきます。キリマンジャロとかモカとかいったストレートコーヒーが出てくることはありません。なぜならストレートコーヒーはそれぞれ個性が強く、一般のコーヒーファンには向かないからです。逆に言えばブレンドコーヒーは個性が弱く、まろやかで万人に愛され、無難なのです。

 ウィスキーも同じで、シングルモルトと呼ばれる単品ウィスキーは高価なものが多いのですが、癖は強く、好みが別れます(と偉そうに言っていますが、高価なので飲んだことはありません)。それに対して、ブレンデッドと呼ばれるブレンドウイスキーブレンドの仕方によってずいぶんと味が違ったりしますが、基本的には味がまろやかで、飲みやすいものです。世の中のウィスキーのほとんどがこれですが、先日の飲み会の最中にむちゃくちゃ美味しいということで滝沢先生と盛り上がったいわゆるジョニ黒(ジョニー・ウォーカー黒ラベル)は、40種類ものモルトブレンドされているといいます。

 おそらく人間も同じで、より多くの人間に触れ、混ざり、ぶつかり合ったり手を取り合ったりすればするほど、人格はまろやかになり、万人に通用するものになるように思います。

 私が子どものころなどはまさに映画「Always 三丁目の夕日」みたいな世界で、相当に小さなころからたくさんの子どもたちがぶつかり合っていました。今は下手をすると、母子二人きりで乳幼児期を過ごしたような、シングルモルトの子どもたちが学校に上がってきます。小学校からでは遅いのかもしれませんが、これをブレンドにするのが私たちの仕事なのかもしれません。