武家の女性

 

 今私が読んでいるのは、山川菊栄著「武家の女性」(岩波文庫:1983)という本です。元は昭和18年に出版されたもので、山川が母親の千世(ちせ)から聞き取った、幕末水戸藩の中級武士の生活を記録したものです。

 日本人がかつてどのような生活をし、どのような教育を受けて今日の基礎を作ったのか、少しまとめて勉強しておこうと思ったのです。

 一読して驚くのはまずその労働です。

 下級武士だと内職が許可され上級武士だと十分な俸禄と、両極端はどうにかなるのに、中級の武士たちは内職も不許可なら、家格に応じて馬一頭・家来3人などと絶対に負わなければならない負担がいくつもあり、またそれなりの広大な屋敷も維持しなければならないので、ものすごく貧しいのです。そこで家計を支えるための労働が山ほど生まれます。男は畑仕事でほとんど自給自足の食糧事情を維持しなければなりませんし、女性は年がら年中糸を紡いで機を織り、一家の服装を整えなくてはなりません。町家の人間とは異なり、芝居見物といった楽しみも禁止されていましたので、とにかく単調で重いのです。

 また、そうした家庭から育ってくる男子や女子というのも、驚くほど勤勉で安定した生活を送ってきます。

 武士の子どもの通う塾は、朝飯前に教科書の音読があり、いったん帰宅して朝食を摂り、再登校して日長、書き取りばかりを延々続けたなど、この本から学ぶことはたくさんあるのですが、十分な紙面がありませんので改めてお話しましょう。

 著者は社会主義者山川均の妻で女性運動家として有名な人です。それだけに文章も上手で、読み物としても十分楽しめます。お勧めです。