私が今読んでいるのは、「ヘレン・ケラーはどう教育されたか―サリバン先生の記録−」という本です。
1887年3月3日、21歳のアン・サリバンは家庭教師としてヘレン・ケラーのもとにやってきます。すでに何人もの家庭教師が辞めて行ったあとです。
当時6歳9ヶ月のヘレンは、2歳になる前に聴力と視力を失い、ほとんど「家の中の野生児」として生活していたのです。当然、アンとは対立します。その様子は映画でも有名ですが、本の中は「彼女の過去の経験や連想は、すべて私と対立しました」と表現されます。そしてその結果、
「彼女が私に服従することを学ぶまでは、言語やその他のことを教えようとしても無駄なことが、私にははっきりわかりました。私はそのことについていろいろなことを考えましたが、考えれば考えるほど、服従こそが、知識ばかりか、愛さえもがこの子の心に入っていく門戸であると確信するようになりました」
と書くようになります。ヘレンと出会ってわずか1週間後のことです。
服従がなければ、愛さえも入っていかない
ここにサリバン先生のユニークな発想があります。
私たちは愛をもって誠実に丁寧に扱っていけば、必ず子どもに伝わって行くと教えられてきました。
しかしまず話を聞かなければ何も始まらないではないか、「とにかく聞こう」「従ってみよう」という気持ちがなければ何も伝わっていかないのではないか、アンはそう考えるのです。
服従させましょうと言えば殆どの人が抵抗感を持ちます。ですから、「素直にさせましょう」くらいに言っておくのが適切ですが、要はそういうことです。
その後、サリバン先生は次々とヘレンに奇跡を起こします。
そのことからアンは「奇跡の人」と呼ばれます。繰り返しますが、わずか21歳の女性の話です。