「国家の品格」の藤原正彦はエッセイの中で、子ども時代に『クオレ』を読んだときの感動を語った後、次のように付け加えています。
余談だが、三十代の頃、ある雑誌に「幼少時に読んでもっとも影響された本を再読し感想を書け」という原稿を依頼された。『クオレ』を取り出し読み直してみた。さほど感動しなかった。私はこの時、「小学生の時に読んでおいてよかった」とつくづく思った。
藤原正彦はまた、昔、街角で見つけた少年少女世界文学全集の広告に、「早く読まないと大人になっちゃう」というキャッチ・コピーがあって感心した、という話を、講演会の中で繰り返し語っています。
読むべきときに読むべき本を読んでおかないと取り返しがつかない、といった意味かと思います
さて、私は読書週間のたびに飽きもせず、次の詩を学年通信や学級通信に載せます。昨年もご紹介しましたが、今年も書いておきます。
こどもたちよ
茨田 晃夫
こどもたちよ。
私がお前たちに遺してあげられるものは、あまりにも少ない。
兄弟けんかも起こらないほどの僅かな財産と、
正直だけが取柄の血筋、何枚かの写真。
そして、書棚の古びた本と、読書を苦痛に感じない習慣・・・。
伝えるものはそれですべてだ。
(中略)
想像の翼を持たない者は、いつまでも夢にとどかない。
幸いお前には、インクの染みのような活字の羅列から
物語を創造できる力を持っている。
小さな頃、寝床で本を読んできかせるとお前は目を輝かせていた。
その頃の興奮を忘れないでほしい。
こどもたちよ。
私がお前たちに遺してあげられるものは、あまりにも少ない。
兄弟けんかも起こらないほどの僅かな財産と、
正直だけが取柄の血筋、何枚かの写真。
そして、書棚の古びた本と、読書を苦痛に感じない習慣・・・。