カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「運動会の練習」~教師と児童が手を携えて、ひとつのものをつくり上げる日々

 運動会まであと、わずかになりました。
 昨日は1年生のかけっこの練習を見ました。

「前に進むと白い線(スタートライン)があるよね。そこに何をつけるんだっけ?」
「顔―ッ!」
「顔ではありません。つま先をつけるんです」(と、平然と訂正するところがすごかった)
「それから、横を向いたまま走ると必ず遅くなります。だから絶対に横を向いてはいけません」
 1年生は一から十まで全部言ってやらなくてはならないから大変です。

 一方、5・6年生は組み体操に余念がありません。私たちは普通、他学年の練習を見ることはありませんから、組体操がどのように作られてくるか知らないのですが、逆立ちもままならないところからあれだけのものを仕上げるのは容易なことではないのです。

 教師と児童がひとつになり、痛みや苦しみや恐怖に耐え、ひとつの美しいものを作り上げるという体験は、学校生活の中でもそうたびたびあるものではありません。じっくり取り組ませたいものですね。

 教育再生会議小谷実可子は「テレビの30人31脚に感動した。ああいうものを学校教育の中に取り入れる必要がある」と言ったりしましたが、学校にはすでに「ああいうもの」があるのです。

 私はかつて5段のピラミッドを男女一基ずつ立てることに腐心したことがありますが、あれなど生半可な気持ちでは絶対にできないものです。
 1番下の中央の子は中心線の4人分の体重をひとりで支えなくてはなりませんし、それ以外の4人は背に乗る人数が減りますからその分楽なように見えますが、実は上からの重みが横に流れるので、中心に身体を寄せていかないとピラミッド全体が崩れてしまうのです。最下層の両端の子など、内側に向かってものすごい力で抑え込んでいかないと簡単にはじき出されてしまいます。

 2段目以上の子たちは、足場の悪さと上からの重みの両方に耐えながら何とかバランスをとります。そして一番上に乗る子はピラミッド全体のバランスを崩さずに最上段に駆け上がる素早さと、高さの恐怖に耐える力がなければなりません。

 私が当該学年だったとき、実際の指導に当たったのは私よりさらに若い男女の教員でした。5段のピラミッドはなかなか完成せず、特に男子は本番の前日にもうまく行かず、最後の練習で「これでできなかったら諦めて、明日は4段のピラミッドで行く」と決めた最終回に完成しました。

 その直後、指導した若い男の先生は体育館からいなくなってしまい、だいぶ経ってから真っ赤な目をして戻ってきました。翌日の本番では、男女二基とも見事に立ちました。そういうものです。