カイト・カフェ

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「耳の良い、反射神経の鋭い子を育てるプロの仕事」~中井先生のすごい技

 1時間目の始まりに、ちょっと用があって中井先生のクラスに行き、面白いものを見ました。それは中井先生の技です。

 算数の授業に使う道具(おはじき)を後ろのロッカーに取りに行くのですが、それをするのに、音楽に合わせてやらせるのです。
「競争じゃないのだから、急がなくていいのよ。曲が終わるまでに持ってくればいいのだから」
 そう言いながらオルガンで「さんぽ」を弾き、ちょうど椅子取りゲームの要領で、何度か音楽を止めてしまいます。すると子どもたちは、そのたびに止まらなくてはならないのです(その姿はちょうど「ダルマさんが転んだ!」と同じ感じです)。

 そのゲームの達人となるためには、まず耳が良くなくてはなりません。聴力の問題ではなく、集中して曲を聴き、音楽の止まった瞬間を聞き逃さない力が必要なのです。そしてその上で体が敏感に反応し、瞬間的に停止しなくてはなりません。肉体のコントロールが適切でない子は、きちんと止まれないのです。

「マニュアル人間」という言葉があって、何でも先生の言うとおりにしかできない人間のことを言うらしいのですが、私たちが知っているのは圧倒的に「先生の言うとおりにできない子たち」です。先生の指示が出た瞬間に指示に気づけない、気づいた瞬間にそれまでの活動を停止し次の行動に移る、そういうことのできない子たちです。
 中井先生のやっておられることが、耳の良い、反射神経の鋭い子を育てることに直結するかは不明です。しかしただ「静かにしなさい」「こっちを見て!」「きちんと話を聞きなさい!」と叫んでいるよりは、何十倍も効果のあることのように感じました。
 少なくとも、非常にプロっぽいやり口には違いありません。