カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「皆勤の勧め」~危険だがやはり必要

 中学校の学年集会の最中に失神し、顔から倒れて前歯を折った女の子がいました。女の子なのですぐにも歯医者に行きたがったのですが、動き始めたとたんに頭が痛いと言い出し、だったら脳神経外科が先だという話になって、行ってCTを撮って医師の説明を聞き、歯科医に移動して「この歯はダメだ」と諦めさせられ、そうこうしているうちに6時近くなって、それまで泣かなかったその子がメソメソと泣き始めました。

 何かと思ったら、スイミングスクールの時間に間に合わなくなるとのこと・・・この期に及んでなんだ、と思ったのですが、途中から来てくれた母親はそのあと大急ぎでスイミングスクールに連れて行ってしまいました。あとから知ったのですが、その子は8年間スイミングスクール皆勤で、毎月出る機関紙のランキングでトップにいたのです。

 確かに72ヶ月以上皆勤というのは尋常ではありません。
 8年間のすべての土曜日にスイミングスクールにいるためには、家族全部の生活も制約されたはずです。土日の一泊旅行もできない、親戚の家でもゆっくりできない、友達との遊びもそこそこに、時間になったらビート板を抱えて必死にプールに向かう、そんな日々が続いたはずです。そうした努力に比べれば、前歯一本など何ほどのことかと、よく分かる話です。

 1学期いっぱいをがんばって1日も休まなかった子は、2学期休むのが難しくなります。1年間1日も休まなかった子は翌年休みにくいでしょうし、3年皆勤したらもう絶対に休めなくなります。少しぐらいつらいことがあっても必ず学校に来ます。そして来てさえいれば事情が変わり、楽しいことも出てきたりします。

 休まないことを目標に置くことは、教師にとってかなり危険な面があります。本当は休んだ方がいい子も学校に来てしまうからです。
 しかし私はそんなリスクは喜んで受け入れようと思います。なんといっても、学校を気軽に休むことのリスクは、休まないことのリスクよりはるかに大きいからです。