カイト・カフェ

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「もの隠し」~弱者の犯罪

 もの隠しは典型的な「弱者の犯罪」であって、集団で行われることは稀です。私の経験で言えば20年ほど昔、中学生の不良女子グループが遊び半分で本当に楽しくやり続けたことがありますが、それは例外的で、普通は孤立した、さびしい子によって行われます。

 やっている本人が多数派だったり、逆に被害者の方が孤立しているといった状況なら物隠しのような面倒なことはせず、からかいや無視など積極的で厳しいイジメをすればいいだけです。いじめたい相手に支持者がたくさんいたり、こちらが一人ぼっちでまったく無力だったりするから物隠ししかできない、その意味では、惨めな犯罪とも言えます。

 もちろんさまざまな方法を駆使して被害を止めるよう努力しなければなりません。それは当然のことですが、それと同時に、被害者には「あなたには支持者や仲間がたくさんいるのだ」ということを常に伝え続けることは大事でしょう。そうしなければ子どものほうが参ってしまいます。

 またそれとともに、クラスの中で沈んでいる子、不遇な子、家庭的にあるいは何らかの事情で恵まれていない子、そんな子にも光を当てなければなりません。だれだっていつまでも犯罪者でなんかいたくないのです。

 私は以前、こんな話を聞いたことがあります。
 クラスに物隠しが絶えず、犯人の目星はついているもののどうしても尻尾がつかめない、そんな状態を打破するために、授業中、さりげなくその子をエコヒイキしたというのです。そっと答えのヒントを与えたり、やさしい言葉をかける回数を増やしていく、そんなやり方をしているうちに、いつかもの隠しはなくなってしまったそうです。

 白黒をつけなければ気のすまない私のような人間には不向きですが、ある意味、そちらの方がむしろ本質的な解決といえるのかもしれません。