叱り方というワイルドカード


 「確かにオレのやったことは悪いけどヨー、あの叱り方はねェんじゃネ?」

 昔からの不良の言い分です。しかしそれが保護者も用いるようになったことは驚きです。

『確かにウチの子も悪いかもしれません。でも・・・

「みんなの前で叱るなんて」

「あんな汚い言葉で叱るなんて」

「昔のことまで持ち出して叱るなんて」

おかげで子どもは学校に行きたくないと言っています。これで不登校にでもなったらどう責任を取ってくれるのです?』

 どう責任を取るのかとすごまれれば、責任の取りようはありませんから仕方なく教師は謝る。

「もうお子さんを傷つけるようなことはしません」

 しかし子どもが傷つかないような叱り方と言うものが世の中にあるのでしょうか?

 自分は悪いことをしてしまったと思って傷つく、先生からの信頼に傷が入ったかもしれないと思って傷つく、友だちからの信頼も失うかもしれないと思って傷つく、だから二度とそんなことはしないでおこう思う、それが叱られることの効用です。叱られて傷つかないとしたら、叱ること自体に意味がなくなります。

 また保護者が「叱り方が悪い」と抗議し、教師が謝っているその間、発端となった子どもの問題は完全に棚上げになってしまいます。つまりどんなに悪いことをしても、教師の叱り方を問題にすれば悪事はチャラになってしまうのです。そんな馬鹿なことはないと思っても、それが現実です。

 こうした逆転に対して対抗する手段は今のところありません。ひたすら忍従し、非難されるような叱り方をしないよう、細心の注意を払うしかないのです。もし他に方法があるとしたら、そもそも叱らないで済むよう前もって十分な下準備をしておくしかないということです。