カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「死んだ子どもは地獄にも行けない」~地獄からも遠ざけられる人々

 有名なダンテの「神曲」は百章からなる物語で、三十三章の「地獄編」、三十三章の「煉獄編」、そして三十三章の「天国編」が続きます。
 三十三の三倍ですから、一章足りなくなるのですが、それは天国からも煉獄からも、地獄からも遠ざけられた人々のための章に当たります。
 彼らは神と悪魔の戦いの日、どちらにも味方しなかったために地獄からも遠ざけられ、地獄門の前で、目を潰され、永遠にさまよう人たちです。
 地獄に行けば、そこに天国へのチャンスも生まれます。しかし地獄門の前の人々には、いささかの希望もないのです。

 仏教の世界にも、地獄から遠ざけられた者がいます。それは子どもです。
 たとえ病気であっても、子どもが子どものまま死ぬというのは大変な親不孝ですから、三途の川も渡れません。
 子どもたちは川のこちら側の「賽の河原」で、鬼に急き立てられ、石の山積みを作らされるのです。
「ひとつ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは西を見て・・・」
 祈りながら石の山を築くのですが、夕方になると鬼たちに壊されてしまい、翌朝ふたたび最初からやり直しです。
「ひとつ積んでは父のため、二つ積んでは母のため・・・」
 子どもは、子どもである限りは死んではいけない、という教えです。