日光東照宮の「見ざる・言わざる・聞かざる」について、私は長いこと、社会に背を向け、できるだけトラブルに巻き込まれないように小さく生きる、それが正しいんだというような、卑屈な教えだと思っていました。
サルといえば諺や慣用句にも「猿知恵」だとか「猿真似」だとかロクなものがありませんし、日光東照宮は「(百姓は)生かさぬよう、殺さぬよう」と言った徳川家の神社ですから、そこから妙な連想ができあがっていたのかも知れません。
ところが昨年末、あるテレビ番組を見ていたら「三猿は、悪いことを見ない、悪いことを聞かない、悪いことを口にしないという尊い教えで・・・」と言っていたので、椅子から転げ落ちるほどに驚きました。
言われて見れば私が考えていたような卑屈な教えだとすると、幾種゙もの置物が作られ、家庭に置かれるなんてことはあるはずもありません。調べたら、三猿はヨーロッパでも人気の置物だそうです。
人は経験から学ぶといいますが、ひとりの人間が生涯に経験できることなどタカが知れています。だとしたら良い経験をたくさんすべきですし、特に子どもはそうありたいものです。悪い経験や無意味な経験からものを学ぶには、相当の年齢の積み重ねが必要です。
悪いことを見ない、悪いことを聞かない、悪いことを口にしない
なかなか素敵な教えです。
子どもたちに常に上質の経験を与えられるよう、私たちも努力しましょう。
*知り合いに、三猿を「見ざる・言わざる・着飾る」だと思い込んでいたという男がいますが、これは話が面白すぎて信用ならないと思っています。