カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「日本企業の実力」〜大人になって働くようになればきっと楽しいことがあるに違いないというお話

 今年7月16日に発生した中越沖地震の際、リケンという私たちにはなじみのない企業が被災し、しばらく生産がストップしました。これだけなら単なる地方の一企業の事件なのですが、二日としないうちに、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーが次々と操業停止に追い込まれ、この会社の驚くべき実力が明らかになりました。

 普通の人々は知りませんで下が、日本中の自動車の変速機などに使われるシール材の7割、ピストンリングの4割がこの会社によって生み出されていたのです。自動車会社としてはもちろん、危険分散の立場から複数の企業に発注をかけたいところなのですが、技術をもっている企業が一社しかないと、どうしてもこうなります。必死のトヨタ自動車などは数百人規模で社員を派遣し、リケンの復興に努めました。

 このように日本の中小企業の中には異常な技術力をもった会社がいくつもあります。たとえば、東京の大田区にある北嶋絞(しぼり)製作所という会社はロケットの先端部を作るノウハウをもっていて、ここで製作される部品がなければ、アメリカのロケットは飛びません。アメリカのスペースシャトル人工衛星の溶接を引き受けているのも、電子ビーム溶接という、世界で唯一の技術を持つ日本の東成エレクトロビームという中小企業です。

 携帯電話の小型化に必要だったリチウムイオン電池のステンレスケースを細く絞る技術は、世界でも東京の墨田区にある岡野工業株式会社にしかありません。さらに最近、この会社は「世界一細い注射針」の開発に成功して、一日に何回も注射しなければならない糖尿病愚者をはじめ、世界中の人々から「痛くない注射針」として歓迎されています。

 日本製のVTRに使われているベアリングはフランス製のミサイルのジャイロに使われているものより高精度ですが、これも東京都内の一町工場が作っているものです。

 小さな会社が世界を動かしているというこんな話、ウキウキしません? 子どもたちを見てると、大人になることなんて少しも楽しみではなく、働くことなんて真っ平、といった感じさえあります。しかし社会を広く見ると、やりがいのありそうな、楽しい会社はいくらでもありそうです。