【第一話】
読み聞かせが好きで、二人の子どもにはそれぞれ2歳のころから、小学校の5年生になるまで、毎晩必ず布団の中で本の読み聞かせをしていました。
その結果、姉の方は大変な読書家になり、最近は東野圭吾に傾倒して、受験勉強の合間にもせっせと読書に励んでいます。
弟の方は・・・むしろ「本を読んで」とせがむ割合の多かった方ですが、結局父と子のコミュニケーションを楽しむことに主眼があったようで、今では漫画以外ほとんど本は読みません。ただしそんな子ですから、小さなころ私が読んであげなければ「宝島」だの「ロビンソンクルーソー」だの「十五少年漂流記」などには生涯触れることなく終わったと思いますので、やはり読んであげて良かったなあと思っています。
【第二話】
姉は保育園の年長の時から、弟は小学校に上がった時から、それぞれ6年生を終えるまでピアノを習わせました。
姉は大変な努力家ですので練習にも熱心に取り組んでいましたが、中学校に入学して運動系の部活との両立ができず、泣く泣くピアノ教室を辞めました。以後、私の知る限り2〜3回はピアノに向かいましたが、あとは弾いている姿を見たことはありません。
弟の方は、おそらく6年間、ただの一度もピアノを楽しいと思ったことはないはずです。週に一度の教室でしたが、前日は必ず「溜め練習」で何とかカッコウだけを整えて通ったものです。辞めたい気持ちは山ほどでしたが、そういうことを言っても両親ともに取り付く島がないことを知っていたので、我慢していたのです。
小学校を卒業した翌日、本当に晴れ晴れとした表情で最後のレッスンから戻ってきました。
それから一年・・・。
ある日家に帰ると、客間からピアノの音が聞こえてくるのです(子どもたちに使われなくなったピアノは、居間に死蔵されるようになっていました)。不思議に思って見ると、演奏していたのは弟の方でした。
「何となく弾いてみたくなった」
そう彼は言います。
しばらくして、弟の方が、
「電子ピアノを部屋に入れてほしい」
と言い出しました。親の勤務の関係で、持ち家を後にして遠くに転勤しなければならなくなった時、必要に迫られて買った電子ピアノがあったのです。それが弟の部屋に入りました。
そしてそれ以外に、姉が持っていた「ピアノの音から犬の声まで99種類の音が出せるキーボード」というものがあって、それがいつの間にか弟の部屋に入りました。それらを直角に組み合わせ、左手で電子ピアノ、右手でキーボードを弾けるようにしたのです。
今、下の子(弟)は「アニソン(アニメ・ソング)」に夢中です。繰り返し音楽を聴いてそれを右手に落とし、左手は自分でアレンジして、一朝懸命弾ける曲にしています。
さて、
親は子の可能性に期待してさまざまなことに兆戦させ、あるいはお膳立てしたりします。しかしそれらはあたる時もあれば外れる時もあります。
しかし何もしなければ、外れることもない代わりに、あたることももありません。