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「2007年問題の憂鬱」~都会で大規模な教員不足が起こる!

 団塊の世代で一番人数の多い1947年生まれの人たちが定年退職を迎えるのに伴って、起こるだろうと予想される問題の総称を2007年問題といいます。

 具体的には職人的能力でカバーされていた技術が継承されないまま失われるとか、労働人口が急減少することなどがあげられています。 私たち教員の世界についても、大量退職に伴う教員不足が心配されていますが、ここには一つの誤解があります。それは 急激な教員不足は首都圏と愛知県、阪神圏でしかおきない ということです。逆に北海道・沖縄・鹿児島などでは、今後も採用が減りつづけます(私たちの県はずっと安定したままです)。

 なぜこんなことになったのかというと、1960年代の高度成長期に大都市に流れこんだ大量の若者が、やがて成長し結婚し、そして生まれた子たちが学齢期になったのが1970年代初頭。都会の周辺に大きな新興住宅地が造成され、それにつれて大量の小中学校が新設され教員が大量に採用されたのが70年代だったからです。

 地方では、爆発的人口増加はありませんでしたから、そのようなことにはなりませんでした。ですから2007年の大量退職も教員不足もなく、地方によってはいまだに採用試験が高倍率を維持しています。たとえば2006年の採用倍率は千葉県の2.5倍に対して秋田県は27.7倍もあるのです。

 千葉県についてはつい8年前は29倍でしたから、6〜7年の間に10分の1以下に落ちてしまったことになります。
「競争率が3倍を下回ると質の低下が始まり、2倍を下回ると適格性欠如で退職者が出てくる」といいます。

 そこで都会では必死の策に出ます。

 たとえば大阪府は隣りの和歌山県から、教員をレンタルで借り受けています。

 和歌山県の教員の大量退職は大阪府より遅れて来ることが分かっています。ですから現在、大量に新規採用をする必要はないのですが、競争率が高く優秀な人材が取りやすい今こそということで、必要よりも余計に教員を採用しています。そしてそれを大阪府に貸し出すことで、将来の教員不足(=質の低下)に備えているのです。

 もっと過激な道を選んだ県もあります。それはたとえば滋賀県「現役教員優先採用」です。

 私は最初これが何なのかよく分かりませんでした。現役教員が採用試験を受けるという意味が分からなかったのです。しかしそれは要するに「他県から引き抜くぞ!」という宣言にほかならなかったのです。

 私たちの県が時間と費用をかけて育てた優秀な教員が一夜にして大都市に鞍替えする、そういった可能性が出て来たわけです。

 独身の先生なら、都会の人と結婚してそちらで簡単に採用されるということも可能です。給与も労働条件も格段に良く責任は軽いですから、かなりよい選択とも言えます。

 つまり、私たちには関係ないと思っていた大量退職の問題が、都会よりはさらに深刻な形で、私たちのところにも押し寄せるかもしれないのです。