カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「学校が学力向上に傾けば、我が子はむしろおいて行かれるのかもしれない」~学力問題の行く末

 私の先輩の数学教師が「授業はやればやるほど差がつく」という研究成果を発表しています。
 それは常識的に考えても当たり前で、学校が一切の授業をやらなかったら、全員おバカのまま平等です。

 また、授業時数を増やせば成績の低い子も一時的に伸びますが、成績上位の子は更なる勢いで伸びてしまいますから、差は広がる一方なのです。そしてある程度広がったところで、今度は下位の子の成績が下がり始めます。極限まで差が広がると、下の子たちは「それでも頑張ろう」という意欲を失ってしまうからです。
 結局、何が何でも差を縮めようと思ったら、成績上位の子が伸びないような方策を練っておくしかありません。
 しかしそんなことは教員はできないのです。

 さて、世の中は上げて「学力」「学力」の大騒ぎです。学校が学力低下を心配して授業の質を上げようとするのは当然としても、世のお父さんお母さんたちが日本の子どもの学力を心配して授業時数を増やせというのはいかにも解せません。なぜなら、
日本中の子どもが勉強しない今こそ、わが子をトップクラスにする絶好のチャンス
なのですから。

 これが学校で勉強をガンガンさせ、宿題が山ほど出る時代になったらどうでしょう? 今でこそ日に2~3時間も勉強すれ場あっという間にトップクラスに仲間入りできますが、みんなが2~3時間も始めるようになったら、4時間~5時間勉強してもトップクラスを望むのは難しくなります。俗に言う「頭のいい子」たちが2~3時間の勉強を始めたら誰もかなわないからです。
 つまり、今回の学力騒動は「日本では大多数である『普通の子』のお父さんやお母さんが、わが子のチャンスを犠牲にして、日本全体の学力向上を願った稀有な事件」ということになります。

 ついでに言うと小学生からの英語教育に対して、多くの教員が否定的なのに保護者のほとんどは大賛成です。保護者のみなさんは中学高校時代の自分を忘れてしまったのでしょうか?
 中1の4月には平等だった英語の成績、6年後の高校3年生の最後はどれほどちがっていたのか。そのために自分がどんなに悲しい思いをしたのか・・・。

 小学校の1年生から英語を始めるということは、あの差がさらに6年分広がるということなのです。もちろんあなたのお子さんが、楽譜記号のクレッシェンドのように広がって行く差の、上のほうにいるのならいいのですが、中以下だったら大変です。中学校の2年生くらいから、完全にわからなくなります。英語の苦手だったあなたのお子さんはやはり英語ができない可能性が高いのですが、日本のトップエリートの英語力を高めるためには、敢えてわが子が苦しむこともいとわないというのでしょうか?

 日本の保護者たちは本当にものわかりが良くなったものです。