カイト・カフェ

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「奇跡の人」~それはヘレン・ケラーのことではない

 澤田先生のバッグからヘレン・ケラーの伝記がのぞいていて懐かしい気持ちになりました。私が小学生のとき最初に読んだ伝記が、ヘレン・ケラーだったからです。もちろん普通の意味で感動し本を閉じたのですが、それから十数年後、今度は別の形でヘレン・ケラーに出会います。それはアン・バンクロフトの主演映画「奇跡の人」(当時でもリバイバル)です。

 アン・サリバンは彼女自身が視覚障害者で、いつもサングラスをかけているような人でした。自身が障害を克服してきた人ですから、指導も容赦ありません。映画ではほとんど抗争といっていいようなやり取りを経て、ヘレンに言葉を獲得させていきます。その激しさは子ども向けの伝記にはなかったもので、本当に鬼気迫るといった雰囲気でした。しかしそれがなければ、ヘレンは最後まで、野獣のような生活を送り続けたに違いないのです。

 アン・サリバンがヘレン・ケラーの家庭教師になったのはわずか20歳か21歳のときです。私は子どもの指導に疲れると、しばしばサリバン先生を思い出して、もう一度がんばろうと思いました。二十歳そこそこの小娘には負けていられないからです。
「奇跡の人(原題:the Miracle Worker)」には「奇跡を起こす人」というニュアンスがあるそうです。つまり「奇跡の人」とはヘレンのことではなく、サリバン先生のことなのです。

 私も教員として、「奇跡の人」の末席に名を連ねたいと思いました。