カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「水族館にて」~宮沢賢治の「やまなし」に寄せて

 宮沢賢治の「やまなし」が好きです。

 最初この作品を読んだときに、なにを言いたいのかサッパリ分からず「変な話だなあ」と思っていたのですが、書き出しの「小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。」を見直したら、一気に理解できたように思いました。

 これは賢治が言葉で描いた透明な絵なのです。物語の流れなどどうでも良く、ただひたすら言葉によって目に見える景色を映し出そうとしたものなのです(と、私は思いました)。

 波から来る光のあみが、底の白い岩の上で、美しくゆらゆらのびたり縮んだりしました。あわや小さなごみからは、まっすぐなかげの棒が、ななめに水の中に並んで立ちました。
 魚が、今度はそこらじゅうの黄金の光をまるっきりくちゃくちゃにして、おまけに自分は鉄色に変に底光りして、また上の方へ上りました。


 これで風景が見えてこないとしたら、よほどヘボな読み手です。

 私は水族館が大好きで、子どもが小さかったころは子どもにかこつけて、よく訪れたものでした。
 ネオンのようなクラゲがフワフワ浮く様、海底にじっと横たわるヒラメやカレイ、イワシやその他の小魚のせわしない動き、ナポレオン・フィッシュだのアロワナだの、どう見ても魚らしくない魚(若いころはそう感じていました)。タカアシガニの何本も組み合わさったクレーンのような足・・・そういうものを見ていると、一日中そこに居ても飽きない感じでした。

 そして、
 ・・・おとっと、そろそろ集合時間。子どもたちを集めなくちゃ。 

 私の幻灯は、これでおしまいであります。