これは私の行ったことではなく、先輩の先生から聞いた話です。
まず、全員で下足箱に行き、「靴をきちんと並べる」ということがどういう状態か確認します。学校によってはいちいち箱の中に線が書いてあるところもありますが、普通はふちに踵を合わせます。その上で、
「さあ、これからは朝学校に来たときや外で遊んだあとは、こんなふうに靴をそろえるんだよ。帰るときは上履きをこんなふうにそろえよう」と、話します。
「でもね、そんなふうにしてもうまくできない人もいるよね。忘れちゃう人もいる」(そして一足、わざとずらして見せます)
「友だちの靴がこんなふうになっていたら、どうしたらいい?」
そう質問すると必ず出てくるのが、
「注意すればいい」です。
そうしたら、
「そうだよね。注意すればいいんだよね。でも、注意しても注意してもうまくできない人がいるよね。そんなときはどうしたらいい?」
そしてここで待ち構えていた答えが返ってくるのです。
「(靴を)直してあげればいい」
「そうだよね。気がついた人が直してあげればいいんだ」
それで翌日から下足箱のはきものはきちんとそろうのだそうです(たぶんそうなるでしょう)。もちろんそうした習慣を維持するためには時々確認しあって繰り返しほめたり、「気がついた人」が先生の場合は先生自身が「直して」あげなければなりませんが、スタートがうまくいけばあとは簡単です。
ここういう話を世間の人にしても、たぶんまったく分かってくれません。中学校の先生だって分からないかもしれません。しかしこうした活動の繰り返しが結局、友だちの欠点や至らなさを認め、少し余計に働いて補っていこうとする子どもをつくりだすのです。そういう子どものたくさんいるクラスでは、いじめだっておきにくいはずです。