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「人の目と自己防衛能力」~子どもの安全を監視だけで行うことはできない

 このところ新聞紙上では「不審者対策の決め手はスクールバスだ」とか「通学路や校門へ防犯カメラを設置するなどの対策を協議する」(小坂文科大臣)とか、およそ実現性のない不審者対策が賑やかです。
 なぜ実現性がないかと言うと、スクールバスを導入するとなれば本校だけで5~6台。C市全体で80台以上も必要になるからです。バスだけなら借金をしても買えますが、朝夕だけのパートタイムで働いてくれ、しかも大型2種免許を持った人を80人揃えるのは不可能でしょう。また、先日の音楽祭ではH中はバス10台を学校に入れるだけで大変だったといいますが、郊外ですらそうです。市街地のE小中の付近に、バスが30台もウロウロするのは考えるだに恐ろしいことです(しかも毎日)。

 監視カメラについては、知事が各校4台として8億4000万円という試算を出していますが(共同通信)、本校の広い学区にカメラ4台では話になりません。また仮に100台ほどを設置したとしても、誰がそれをチェックするのか(私はゴメンです)。
 そうなると実行性のある不審者対策は何か、ということになるのですが、私はそれは人の目と自己防衛能力だけではないかと思っています。

 一般的に言ってこれまでの誘拐事件で、暴れる被害者を無理やり車に乗せたり家に引きずり込んだりといったことはほとんどなかったと思います。大部分は被害者がすんなりと騙され、自分から加害者に近づいています。広島の事件では加害者の携帯に出ていた女の子(加害者の娘)の写真に引き寄せられ、被害者はアパートの階段を上っています。昨年の奈良の事件では、親がGPS付きの携帯電話を持たせるなど日頃から警戒していたにも関わらず、目撃者によると被害者はあっという間に犯人の車に乗り込んでいます。そこに間違いがあります。

 自己防衛能力といっても大したことをするわけではありません。
 車から声をかけられたら慌てずに答えればいいのです。道を聞かれたら親切に教えなくてはなりません。そういうことのできる子でなくてはならないはずです。ただし、運転席から必要な距離は保たなくてはなりません。その人が車から降りたら、一歩うしろに下がる必要もあるでしょう。「その場所まで一緒に行ってよ」と言われたらきっぱりと断らなければなりません。「車には乗れません。ダメだと言われています」。それ以上しつこいようなら、これは怪しいですから走ってでも逃げなくてはなりません。
 お菓子をやるとかおもちゃを見せるとかいうのも全部ダメです。今の時代、きちんとした大人は見ず知らずの子にそんな言い方をしたりしません。また「お母さんに頼まれて迎えにきた」というのもありえないことです。お母さんは、キミの知らない人にキミのことを頼むような人ではないからです。

 こうしたことこそが不審者対策の決め手です。
 ただし、子どもは小さくて非力ですから万が一、ということもあります。そこで周囲の人が見張るのです。監視はあくまでも補助的手段です。監視だけで犯罪を防ぐことは到底できません。

 今夜はN地区の「子どもの安全を守る緊急安全会議」です。「冷静に対処しましょう」とは、とても言える雰囲気ではないでしょう。しかし、そういう立場で会議に臨みたいと思っています。