カイト・カフェ

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「星の話」~天動説が合理的であった時代の話

 今朝、登校しようと家を出ると、真南だと思っていた方角に巨大なオリオン座が見えてびっくりしました。オリオン座は地表近くにある時は東寄り(または西より)にある星座ですから、私の方向感覚が狂っていたのです。
 オリオンは、英語ではオゥライオンといい、米軍の偵察機(P3C)やイギリスの望遠鏡の機種にも名前がつけられているので欧米人にとっては馴染み深い星座といえます。また、オリオン座の最も明るい二つの星、ベテルギウスとリゲルはともに1等星ですが、ベテルギウスが450光年、リゲルは800光年の彼方の星ですから、実際にはリゲルのほうが明るい星です。ベテルギウスは終末期を迎えた星ですが、リゲルはまだ生まれたばかりの若々しい星です。

 昨年9月、小学校4~6年生の4割が「太陽が地球の周りを回っている」と信じている、という調査結果が発表され、あちこちで衝撃をもって受け取られました。しかし教えていないことは知りませんし、身にもついていないのは当たり前です。星や星座の勉強だって十分にしているわけではありません。もっとも現実問題として、小学生のうちは天動説だってちっともかまわないはずだと、私は思っています。

 今年の夏、小泉総理が「それでも地球は回っている」というガリレオの言葉を引用して改めて有名になりましたが、地動説が受け入れられなかったのは何も宗教上の理由だけではありません。物理学上のいくつかの発見がなされるまで、科学的にも計算上も天動説の方が正しいように見えたのです。ガリレオはそのためにいつまでも研究を続けなければならなかったのです。そして今でも、子どもの世界では、天動説で話した方がわかりやすい話がたくさんあります。

 例えば、
 毎晩同じ時刻に外に出て空を見上げれば、満天の星はほぼ同じ位置に存在すること。それが24時間で一周してくること。「ほぼ同じ」といっても毎日、角度にして1度ほどずれ続け、それが一年で360度ほどつまり一周のずれになること、だから冬の星座は夏には見えないこと。
 ほとんどすべての星がいつも同じ位置にあるから、それらは「恒(つね)なる星」=「恒星」と呼ばれること。ところが中に5つだけ別の動きをしている星があり、しょっちゅうフラフラしているので「惑(まど)う星」=「惑星」と呼ばれること。そういったことは天動説に向いています。

 さらに発展させ、中国の占星術師はこの不思議な五つの星と、天空の動きに支配されないもうふたつの天体=月と太陽をセットにして七曜をつくったこと。それがなぜ火や水や木かというと、昔の中国の哲学者が万物は5つの成分(木火土金水=もっかどこんすい)から作られており、さらに陰(月)と陽(太陽)いずれかの性質を持っていると信じていたからということ。そしてその性質を読み、すべてを占う人が「陰と陽の先生=陰陽師(おんみょうじ)」だということ。そういったことも話してやれば、もっと興味をもって夜空を見上げてくれるでしょう。

 空気のきれいな季節です。研究授業も終わりました。少々余裕をもって、子どもたちと話をしたいものです。