「鳥の話」

 

 野鳥の鷹は「高いところ」にいるから「鷹」とついているのではなく、鷹のいるような上空の場所のことを「鷹い」と言うようになったという話を聞いたことがあります。

 

 類人猿や猿人が言葉を使い始めた時、最初は「ワー」とか「ギャ−」とかで始まり、それだけではせいぜい70〜80くらいの意味しか表せないので、次第に二音の言葉が使われ出すという話も、同時に聞きました。その時まっさきに作られたのが、食料と敵を表す言葉、そして行動を示す最低の単語なのです。「コイ」「フナ」「サケ」「マス」、「クマ」「トラ」「サメ」「ゾウ」「イヌ」「ネコ」。そして「行け」「来い」「見ろ」「やれ」などがそうです。

「マグロ」はおいしい魚ですが、海辺でちょっと釣るというわけには行きませんから、本格的に獲れるようになってから名前がつきます。同じように「カジキ」や「シイラ」もそれなりに時代を下らないと、名もない魚のままです。人間にとって食料でも敵でもないもの、例えば「コマドリ」やら「コウノトリ」などは、それなりの時期が来ないと名前がつきません。そのころになると二音・三音でも不足ですから、四音・五音の単語も使われ始めるのです。

 

 そう考えるとニワトリ(四音)は、少なくとも日本ではずいぶん遅くなってから人間の近くにいるようになったことが分かります。中国語では「鶏(ケイ)」ですから中国では大昔から飼われていたのでしょう。それが日本に伝わったのは弥生時代頃だと言われています。(ついでに言うと「馬」も日本にはいませんでした。そのことは『魏志倭人伝』にはっきりと書いてあります。馬が日本に入ってきた四世紀、日本人は中国語の「馬(マーまたはバー)」をそのまま使っていましたが、それがやがて「ンマー」→「ウマ」となったと考えられています)。

 

 昨日来られた獣医さんの話によると、かつてはどこの家でもニワトリを飼って卵を産ませていたそうですが、卵を産まなくなった雌鶏や年をとった雄鶏はすぐに肉にされ、若い鶏と交代させられてしまったようです。

 本校のニワトリは10年を超える長寿です。しかし今書いたような事情で「天寿を全うしたニワトリ」というものは2000年来ほとんど存在しませんでしたので、ニワトリはどれくらい生きるのか、歳をとったニワトリはどうなるのかといったことは、獣医さんにもよく分かっていないのだそうです。それには笑ってしまいました。